かくも長き不在 Une aussi longue absence

1961年 外国映画 3ツ星 ドラマ 戦争 記憶操作 障害

絶望的な証拠。

第二次世界大戦後のパリ。カフェを営む未亡人テレーズは、恋人としあわせな日々を過ごしていた。ある日、戦争で死んだ夫アルベールそっくりの浮浪者を見かける。後頭部に怪我で記憶を失っているようだ。テレーズは夫と信じ、その身元を確かめようと、記憶を呼び戻そうと努力するが、ハッキリしない。ただホームレスは「アルベール」と叫ばれたとき、反射的に手を挙げた(ホールドアップ)。それは彼が酷い仕打ちを受けた証拠だった。テレーズは浮浪者を世話すると決めた。

切ない。これでいいのだろうか。
浮浪者は夫とかぎらないのに・・・否、夫だったとしても、テレーズには新しい恋人、新しい生活があった。テレーズは浮浪者を見た瞬間、彼は夫であると確信。すべてを捨てて、ぐいぐい迫っていった。証拠があるから信じたわけではなく、周囲に信じてもらうための証拠を探していたが、結局、自分が信じていればいいと考えた。
捨てられた彼氏から見たら、テレーズは急変こそ異常。愛し合っていたはずなのに、そんな不発弾が眠っていたとは。夫への愛を超えられなかった。比較もされなかった。壮絶な話である。

テーマは好きだけど、映画としては冗長。98分とは思えない。前半、時間をかけて描いた日常風景が、後半の取捨選択に影響しない。影響しないことが異常であることを示す演出にもなってない。その後を想像させるエンディングもいいけど、もうちょっと見せてほしかったかな。モヤモヤする。それが悪いわけじゃないけど。

なにか、希望がほしかった。

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