[報道・教養] NHKスペシャル「原発解体 ~世界の現場は警告する~」 / 原発の後始末

2009年 社会 NHK 原発 報道・教養
[報道・教養] NHKスペシャル「原発解体 ~世界の現場は警告する~」 / 原発の後始末

深夜、NHKスペシャル『原発解体 ~世界の現場は警告する~』を見た。

恐ろしい内容だった。どちらかと言えば、私は原発推進論者だが、このレポートを見ると考えを改めたくなる。原発解体は、知るべきなのに、知られていない問題だった。

いま、原子力発電が注目を集めている。
火力発電に比べ二酸化炭素の排出が大幅に少なく、発電の出力が大きいからだ。原発で怖いのは事故(人災、天災)やテロといった稼働中のトラブルである。しかし私の知るかぎり、日本の原発管理技術は成熟の域にある。なので過剰に不安視したり、反対運動するのは愚かだと思っていた。火を恐れて進歩はないのだから。

だが、より大きな問題は、役目を終えた原子力発電所の解体だった。世界中で閉鎖された原発は120基あまり。日本でも「ふげん」と「東海発電所」の2基が解体に着手している。しかし原発の設計は、解体を考慮しておらず、作業は困難を極めていた

1.解体できない

発電所内の配管やバルブは汚染されている。とりわけ炉心部は、それ自身が放射性同位体と化している(放射化)。目に見えない放射線をガイガーカウンターで計測ながら、防護服とマスクで身を固めた作業員が、せっせと作業を進めている。はじめての作業なので、どんな危険があるか、どのくらい手間がかかるか、誰にもわからない。ロボットを導入しようにも、設計図が残っていなかったり、設計図と異なる構造が見つかって頓挫する。なにもかも手探りで、先が見えない。
発電は高効率だが、解体にはものすごい手間と歳月がかかっている

2.ゴミを捨てられない

なんとか解体しても、ゴミを捨てる場所がない。放射性廃棄物を喜ぶ住民はいないし、そもそも数百年、数千年単位で安心保管できる場所は地球上のどこにもないのだ。捨て場所がないので、原子力発電所の施設内に貯蔵するのだが、スペースがぜんぜん足りない。解体作業が遅れているから、廃棄場所の問題は先送りされている。
少しでも廃棄物を減らすため、汚染が少ない廃材は再利用されることになった。番組では、原子力発電所の廃材で造った公園のベンチが紹介されていた。
なんてこった! そんなところに使われていたなんて! 知っていたら、絶対に座らないよ。

いま世界中で新たな原発の建造が進められている。その総数は100基にのぼる。しかし人間が造るものに永遠はない。数十年後は役目を終え、解体問題に直面するだろう。そのころには、地球温暖化に並ぶ新たな問題になっているかもしれない。

役人に言わせると、解体は未来の技術革新に任せていたらしい。要するに問題の先送りだ。怖いのは技術ではなく、その欠陥を無視する(無視せざるを得ない)人間社会だった。

▼NHKスペシャル『原発解体 ~世界の現場は警告する~』
https://www.nhk.or.jp/special/onair/091011.html

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