[報道・教養] NHKスペシャル「ミラクルボディー」 / スポーツがドラマになる時

2010年 社会 NHK スポーツ 報道・教養
[報道・教養] NHKスペシャル「ミラクルボディー」 / スポーツがドラマになる時

なんとなく、バンクーバーオリンピックを見ている。

私はスポーツに興味がないので、毎度オリンピックは無視してきた。しかし今回は、NHKスペシャル『ミラクルボディー』や『浅田真央 金メダルへの闘い』を見たことで、興味が向いている。やっぱり競技の難しさ、選手たちの努力を知ると、印象がまるでちがう。スポーツがドラマになっている。

"0.7秒"の美しき支配者 - ブライアン・ジュベール

ブライアン・ジュベールは、フィギュアスケートの究極の技「4回転ジャンプ」を跳ぶ選手。あまりにも難しいため、試合で成功できる選手はほんの一握り。ジュベールは機械のように正確に、安定して成功できる希有な選手である。
スピード、タイミング、高さ、体軸の角度、腕を収納する速さ……。すべての条件が揃ってはじめて4回転ジャンプは成功する。最適なコンディションを維持するため、ジュベールは食事制限をし、筋肉がつきすぎないようにトレーニングする。それは4回転ジャンプという「型」に、生身の人間をはめつづけるようなもの。身体より先に精神を病んでしまいそうだ。

番組の5日後、バンクーバーでジュベールが跳んで……失敗した。

結果は総合16位。「ひどい演技をしてしまった」とコメントしている。これでまた4年、あの研鑽の日々がはじまるのか。
4回転ジャンプは成功させても、すべてを挽回するほど高得点にはならない。実際、4回転ジャンプを成功させたプルシェンコは銀メダル、回避したライサチェクが金メダルを獲得している。自分の目指すべき方向性と、評価される基準のギャップ。その葛藤も待っている。

4年の努力を4分で表現 - 浅田真央

今日の午後、浅田真央選手の銀メダルが確定した。「悔いはない」とか「満足です」といった殊勝なコメントはなく、マイクの前で悔し涙を浮かべる彼女に心が震えた。
「長かったけど短かった」という言葉に、すべてが詰まっている。

トリノから4年、その集大成であるフリーの4分間──。
勝つために、評価されてきたイメージを変えた。勝つために、ありえないとされる技と美の両立に挑んだ。しかし結果を出せず、疑問の声を浴びせられる。勝つために変え、勝つために変えない。こうした事情を知ると、やっぱり応援したくなる。勝ってほしい、報われてほしい。

それでも勝てなかった。もう、言葉もない。

私はスポーツに興味がない。スポーツを観て楽しむためには、たくさんの予備知識がいるからだ。知識があれば、数分・数秒の演技に、目で見える以上の価値を見いだせる。もっと知りたくなるし、観たくなる。
しかしスポーツ選手の実情を知ると胸が痛くなるので、あまり知りたくないなぁと思った。

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