[報道・教養] NHKスペシャル「権力の懐に飛び込んだ男 100日の記録」 / 役所の面従腹背

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[報道・教養] NHKスペシャル「権力の懐に飛び込んだ男 100日の記録」 / 役所の面従腹背

昨夜、NHKスペシャル「権力の懐に飛び込んだ男 100日の記録」を見た。

NHKスペシャル「権力の懐に飛び込んだ男 100日の記録」

1年前、"年越し派遣村"の村長を務めた湯浅誠氏は、鳩山政権の招きを受けて、政府参与として失業者対策を担うことになった。行政の働きかけがなければ、貧困は解決できない。しかし権力の懐に飛び込んでも、縦割り行政の壁などに遮られ、なかなか有効な対策ができない。そして湯浅氏は、政府に辞意を表明する......
[URL] https://www.nhk.or.jp/special/onair/100228.html

いやはや、絶望的な内容だった。

  • 例1.失業者対策のワンストップサービスを実施することになった。
  • しかし告知が不十分で利用者が増えない。湯浅氏はもっと積極的なピーアールを求め、官僚もそれを了承するが、具体的にどんなピーアールをするかは現場の専門家に任せることになった。しかし現場の専門家は、なにもしなかった。指示は聞いているが、認識にズレがあったらしい。
  • 新しいサービスは成果を出せず、規模の縮小や廃止されていく。まさに計画どおり!
  • 例2.オリンピック記念青少年総合センターに「公設派遣村」を作ることになった。
  • しかし「湯沸かし器が操作する人がいない」とか「災害時以外は館内放送は使えない」といった言い訳で利用が大きく制限されてしまう。また失業者が押し寄せることが懸念されたため、宿泊施設や手続きの場所は非公表にされた
  • 公設派遣村は設置されたものの、あまり利用されずに終わった。まさに計画通り!

ちなみに放送中は、画面にずっと津波警報が表示されていた。すごく目立つ。湯浅氏が失業者対策の告知に悩む姿を重ねると、なんともシュールだった。

やる気のない役所

まぁ、あれだ。やる気のない人に仕事をさせるのは無理だな
つまり「やる気のない失業者にサービスしても意味はない」と思っている行政が、効果的なサービスをするはずもなく、「やる気のない失業者にサービスしても意味はなかった」という結果が出るだけ。
予算もある。部署もある。鳩山総理も失業者対策の充実を訴え、その政府に招聘された参与がケツを叩いても、現場は動かない。やる気がないから。自分の仕事を増やしたくないから。ここが問題の本質だった。

どうすれば世の中を変えられるのか

結局、湯浅氏は政府を去ることにする(菅副総理から慰留され、現在は態度を保留中)。絶望して辞めるのは潔いのか、卑怯なのか。しかしこのまま権力内部にいれば、やがて新たな壁になってしまいそうな気もする。湯浅氏の今後に期待したい。

「失業者対策なんて意味がない」「弱者を甘やかすだけ」「左翼思想の社会テロ」という見方もある。それはそれで否定しないが、行政の面従腹背はもっと大きな問題だろう。

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2011/09/09 * 政治・経済