[特撮] ウルトラQ dark fantasy / 現代ファンタジー考

2010年 娯楽 娯楽 特撮
[特撮] ウルトラQ dark fantasy / 現代ファンタジー考

最近、ウルトラシリーズに傾倒している。

たまたま平成ウルトラセブン(1994年)を見てしまったことを契機に、ULTRASEVEN X (2007年・全12話)ウルトラQ (1966年・全27話)を観賞。つづいて『ウルトラQ dark fantasy (2004年・全26話)』に手を出してみた。古典と新作を、行ったり来たりしている。

続編からスタート

本作は『ウルトラQ』のリメイクだが、第1話は旧シリーズの続編になっていた。かつて地球人に撃退されたガラゴンが、ふたたびガラゴンとして地球に到来。改良されているので、前回の対策は通じないというストーリーなのだが、2004年に深夜番組を見ている人の何割が、1966年の対策を覚えているだろう? つい先日ウルトラQを観賞した私にもピンとこなかった。無茶すぎる。

番組を覆う旧シリーズの影

旧シリーズに関連するのは第1話のみで、残りは独立したオムニバス構成になっていた。旧シリーズによく似た話もあるが、微妙に用語を変えて、旧シリーズと関連性を作らないようにしてある。オリジナルファンを大切にしたいのか、無視したいのか、よくわからない。

旧シリーズとの関連性は、ずっと気になってしまった。1966年の万城目や由利ちゃんの活躍はなかったのか、あったけど無視されているのか? なぜ「ペギミンH」や「チルソナイト」といった用語を使わないのか?
『ウルトラQ』も荒唐無稽だったけど、「これはこういうもの」と納得できた。新シリーズも同じように納得したいけど、世界観の不連続さがブレーキをかける。第1話が続編でなければ、これほど旧シリーズを意識することもなかったのに。

キャラクターが弱い

新シリーズのレギュラーは、正義感のある新聞記者・坂本剛一と、強気のフリーカメラマン・楠木涼。女性上位なのは現代風だが、そこに新鮮味はない。
ホラーは人間の反応を画一化させる。それゆえ、意外な反応をする人物が、物語を牽引する。本作では、誰もが予定された反応しかしないので、感動がない。キャラクターの魅力がなくなったとき、ドラマはプロット消化になってしまう。
旧シリーズも、キャラクターが特別に個性的だったわけじゃないが、この38年で娯楽は量産され、視聴者の目も肥えた。主役クラスが怪物に立ち向かっていくことは、もはや予定された反応でしかない。

大人は駄目に、子どもは立派に

ところどころ時代の変化を感じさせる演出があって、おもしろかった。たとえば第12話『夢見る石』では、大人がイタズラして子どもに止められていたし、第22話『カネゴンヌの光る径(みち)』に登場した女の子は、募金活動を偽善と決めつけていた。全編通じて、子どもは確固たる自我をもっているし、大人が諭すようなシーンはない。まぁ、深夜番組だから、子ども向けじゃないのは当然だが。
この38年で大人が退化したと思うと、奇妙なおかしさがあった。

全体的に「?」なリメイクだった

いいところもあるが、全体的にはパッとしなかった。ただのリメイクであって、現代風の新解釈(リ・イマジネーション)がないせいだが、その感性を2004年に求めるのは酷か……?
科学的なSFと、おとぎ話のようなファンタジーを混ぜ合わせた「ウルトラQ」の世界。旧シリーズを知らない人には、どう映っただろう? なんであれ、最初に見たものはインパクトが強いから、これはこれでいいと思う人もいるかもしれない。

エピソードリスト

  • 01. 踊るガラゴン ... いきなり続編で、しかもバトルものとは。シリーズを誤解する第1話だ。まぁ、旧作もそうだったけど。
  • 02. らくがき ... マーキングは必ずしも侵略を意味しない。測量や標識だったかもしれないのに。宇宙人の意図を理解不能で片付けるのは時代遅れだ。
  • 03. あなた誰ですか? ... 日常のちょっとした異変をテーマにしたのは秀逸。きれいにまとまりすぎて、怖いくらい。
  • 04. パズルの女 ... 幽霊は恩人を危険から守っていたのに、あのラストは理解できない。幽霊=悪という発想は古すぎるし、スジが通らない。
  • 05. ヒエロニムスの下僕(しもべ) ... 実際のエピソードを踏まえてこそ恐怖が増すのに、「ヒエロニムスマシン」の説明を口頭で済ませるのは不親切。しかし突き放したラストはよかった。
  • 06. 楽園行き ... 楽園と排除勢力の正体に踏み込んでほしかった。あの空間が怪獣の体内で、排除勢力がウルトラ警備隊なら、価値観の逆転が起こったのに。
  • 07. 綺亞羅 ... 天使の愛らしさにしびれる。なにも知らずに逝くのはモッタイナイし、不敬だ。死神を恐れ、忌み嫌う時代はもう終わった。
  • 08. ウニトローダの恩返し ... ポップな宇宙人エピソード。箸休め。
  • 09. 午前2時の誘惑 ... これまた軽いテーマ。おしゃれ小鉢がついてきます。もうちょっと効力の弱い商品をばらまいた方がおもしろかったと思う。
  • 10. 送り火 ... 人の死を日常的に見ている人間が、あんがいマトモなので驚く。誰も意外性のある行動をしないので、ドラマに入っていけなかった。
  • 11. トーテムの眼 ... 『猿の手』の翻案。びっくりするほど直球勝負。トーテムに罪なし。脚本家に罪あり。
  • 12. 夢見る石 ... 大人のイタズラを、子どもが止めようとする逆転はよかった。子どもの健全さ、大人の不健全さは、もうちょい強調してもいいと思うよ。
  • 13. 影の侵略者 ... 鏡像のすり替えはおもしろいが、後半は安っぽい。人間の価値観が、この宇宙で普遍的なものと思ったら大間違いだ。
  • 14. 李里依とリリー ... 『悪魔ッ子』のリメイク。設定を整理したのはよいが、怖さも減じてしまった。幽体が実体を否定する展開は、いま見てもおもしろい。
  • 15. 光る舟 ... これまた直球勝負。後味が爽やかすぎて、萎える。
  • 16. ガラQの大逆襲 ... すっかりマスコット。セミ女が駄目すぎる。
  • 17. 小町 ... オチてない。非人間を愛する覚悟を示せ。浴衣アクションはすてき。
  • 18. 後ろの正面 ... 地獄通信みたいなエピソード。真相と事件がつながってない。
  • 19. レンズ越しの恋 ... ありがちな時間交錯。タイムパラドックスを恐れず、一線を飛び越える勇気(身勝手さ)がほしかった。
  • 20. 密かな終幕 ... 人工生命の暴走なのか、研究者の暴走なのか。
  • 21. 夜霧よ、今夜も... ... ゴシックホラーの導入部はよいが、ありがちすぎる。
  • 22. カネゴンヌの光る径(みち) ... ハナエちゃんの声が愛らしい。背景は古いが、子どもたちは新しい。
  • 23. 右365度の世界 ~ALICE in the 365 degree world~ ... 渡来ゼミは怪獣退治のたびに休講か。自分だけの世界へ行くこと、帰ること、見送ることの意味が弱い。
  • 24. ヒトガタ ... デカルトの引用はいいが、人形に魅力がない。
  • 25. ... 廃墟と芸術家、民間伝承、局の陰謀、共同幻想。盛り込みすぎて、わかりにくい。
  • 26. 虚無の扉 ... 翼くん、舌足らず。想像力を食べるアイデアはいいね。旧作のケムール人の方が怖かったのは、想像力の欠如かもしれない。

個人的な妄想リメイク

ウルトラの名を冠しておきながら、旧シリーズを無視するのは無理だし、無意味だ。むしろ積極的に世界観を共有させた方がいい。また現代の娯楽で、キャラクターの魅力は欠かせない。投げっぱなしの事件が多いなら、なおさらだ。
──たとえば、こんなのはどうだろう?
主人公は万城目の孫娘でロマンティスト(肉食系)、相棒は一ノ谷博士の孫でリアリスト(草食系)。万城目ちゃんがウキウキしながら怪奇現象に突っ込んでいくのを、一ノ谷くんが止めるのだが、真相はいつも2人の予想に反したものになる。
なんか、逆『X-FILES』みたいだな。文句を言うのは楽だが、自分で考えるのは難しい。

『ウルトラQ』は大好きなので、またいつかリメイクしてほしい。だけど、38年後は困る。私が生きているうちに、たのむ。