機械翻訳についてのよしなしごと

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機械翻訳についてのよしなしごと

言葉の壁がなくなるのは、いつごろだろう?

Piccasaウェブアルバムには、外国語で書かれたコメントを機械翻訳(自動翻訳)する機能がついている。たとえば私の写真にドイツ人がコメントすると、その下にグレーで日本語訳が表示される。私が日本語でレスを書いても、ドイツ人はドイツ語で、アメリカ人は英語で、フランス人はフランス語で、ロシア人はロシア語で読む。
そこに言葉の壁はない。互いが何語をしゃべっているかさえ、意識しない。そんな世界がすでに実現できている。

あいにく機械翻訳のクオリティは高くない。短いコメントなので、文法的におかしいこともあるが、珍訳が目立つ。なんとなく気持ちは通じるが、意味は通じない。そんな程度だ。

しかしそう感じるのは日本人だけかもしれない。
機械翻訳には相性があって、英語、ドイツ語、フランス語のような根っこが近い言語(インド・ヨーロッパ語族)間の機械翻訳は実用レベルに達している。一方、日本語は解析しにくい言語だ。英語→日本語より、日本語→英語の方がより困難になっている。
つまり日本人は、外国人の言ってることは理解できても、自分の言いたいことを伝えにくい宿命を負っているわけだ。泣けるぜ。

日本語から機械翻訳しやすいのは韓国語だ(膠着語)。しかしNAVERの日韓翻訳掲示板(Enjoy Korea)は炎上がひどく、そのせいか2009年に閉鎖してしまった。「氏ね」と書いても正しく翻訳できないように、日韓双方の罵倒がエスカレートすると意味不明になっていくのはおもしろかった。

技術の進歩は早い。CEATEC JAPAN 2010でも、iPhoneに日本語でしゃべると、それを英語で発音してくれるサービスがあった(ネットワーク型多言語音声翻訳)。
たとえば「駅はどこですか?」と日本語で吹き込んで、iPhoneからの翻訳音声を相手に聞いてもらう。相手にも返事をiPhoneに吹き込んでもらい、翻訳結果を聞けば、間接的な意思疎通ができる。ヴァーチャル通訳だ。すごい!

こうなると、国際人になるための素質は、特定の言語を熱心に学ぶことより、機械翻訳のクセに精通し、使いこなすことにあるかもしれない。その方がずっと多くの言語と意思疎通できるのだから。

だが、機械翻訳を使いこなすためには、言語(圏)ごとの風俗を知る必要がある。
たとえば、日本人は「リンゴは赤い」という共通認識があるため、「リンゴのようなほっぺ」と表現するが、フランス人は「リンゴは緑色」と認識しているので、直訳しても通じない。このような言語の特徴を学ぶのは、よけい大変かもしれない。

思うことをつらつら書いてみたが、結論はない。