Google Glassで考える三脱の教え

2013年 科技 Google Webサービス
Google Glassで考える三脱の教え

 Google Glassで相手の素性が見えると、幸せになれるんだろうか?

 メガネのように装着し、視界内に情報を投影する装置──Google Glass。市場に出てくるのはずっと先と思っていたが、2013年内に登場すると噂されているとか。

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 Google Glassがあれば、見ただけで関連情報を引き出せるようだ。それがどんな意味をもつのか考えていたら、「三脱の教え」を思い出した。

三脱(さんだつ)の教え

江戸時代、初対面の人に「年齢」、「勤め先」、「身分」を聞いてはならないとされた。失礼に当たるというより、余計な情報が入ることで、相手を色眼鏡で見てしまうことを戒めている。これを「三脱(さんだつ)の教え」という。
 たとえば、見識ある人物に出会っても、自分より年下と知っていたら、すなおに尊敬できなくなる。逆に立派な肩書きを知ってしまうと、相手の愚かさを見逃してしまう。
 人間の内実と、メタ情報(年齢、職業、出自)は連動しない。人間は惑わされやすいから、知らない方が本質を見抜けると教えている。先人の知恵は偉大だ。

Google Glassは真逆をいくアイテムだ

 メタ情報がたくさん表示されることで、かえって相手が見えなくなる。検索して、過去の失敗や成功を「見て」しまえば、どうしたって流される。でもそれは、自分の目で見たことじゃない。他人の目をなぞっているだけだ。生涯の友なんてのは、素性を知らないからこそ見つかるものだしね。

 景色を見るときは景色に、食べるときは食べ物に集中すべきだ。注釈や成分表を見てる場合じゃない。まぁ、これはGoogle Glassにかぎった話じゃない。便利なモノを使うとき、私たちは大切ななにかを失っている恐れがある。
 Google Glassや検索情報が悪いわけじゃない。惑わされるのは人間の性。だからこそ、あえて「見ない」ことが重要になる。

 「三脱の教え」──。

 忘れないようにしたい。