ローズマリーの赤ちゃん Rosemary's Baby

1968年 外国映画 3ツ星 カルト ホラー モンスター:悪魔

悪魔が実在する前提で。

ロマン・ポランスキー監督による有名なホラー映画。おおよそストーリーを知っていたが、ちゃんと視聴したのは2022年。想像とちがって戸惑った。悪魔の実在はぼかされる──ローズマリーの不安が見せた幻覚の可能性が最後まで残ると思っていたから。むしろ逆で、悪魔の実在はハッキリしてるのに、ローズマリーの訴えが無視されるところが恐ろしいのだ。強い女が活躍する映画ばかり見て、任務でも戦えると思ってしまった。

箪笥でふさがれたクローゼット、隣人女性の急死なども怖いが、それ以上に夫のガイが別人に異質に見えるところが怖い。妊娠しようと決めた日のセックスで意識を失い、強姦された夢を見る。愛する夫だから受け入れるべきか? 何度も自分に触れた指や唇が怖くなる。まぁ、触れたのは夫じゃなかったけど。

夫は役者として成功して満足するが、そのためローズマリーを売ったとは思えない。悪魔と取引したのではなく、悪魔に支配されたことが、取引したように見えるのか。悪魔に魅了され、無償で奉仕するより怖さを感じる。

ローズマリーは悪魔崇拝者だけでなく、胎内にも恐怖を抱えている。夫と復縁できれば、胎内の恐怖は消える。ローズマリーが夫と話し合おうとする展開は痛々しかった。
こうした積み重ねがあるから、ラストで「ガイの妻」より「悪魔の母」を選ぶのは自然に思える。守るべきものがないから。そしてこれも、悪魔と取引したように見える。

主演のミア・ファローは、『ナイル殺人事件』のジャクリーンだった。
特別目立つ言動がなくても、目を奪われてしまう女優さんだ。

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