【ゆっくり文庫】ウルトラセブン「ダーク・ゾーン」 The Dark Zone (1967) from Ultraseven
2020年 ゆっくり文庫 SF ファンタジー 映画やテレビから087 地球は狙われている──
宇宙都市・ペガッサ市が地球の軌道に迷い込んできた。このままでは衝突してしまう。地球防衛軍はペガッサ市の破壊を決定するが...
第一版:2020/01/12
第二版:2020/01/24
原作について
ウルトラセブン
「ダーク・ゾーン」
ウルトラセブンは、日本でもっとも有名なヒーローキャラクターであろう。1967年(昭和42年)の放送から53年も経つのに映画やドラマに客演したり、オモチャが作られている。小学生でもウルトラセブンの名前と姿を知ってるんじゃないかな。
私は第二次怪獣ブーム(1971-1974)に直撃し、再放送で魅了された。少年時代に見ることができてよかった。
ウルトラセブンの客演は喜ばしいが、無敵で無謬の存在として描かれるのは違和感があった。テレビ本編のウルトラセブンは、びっくりするほど未熟で、それゆえかっこよかった。しかしテレビ本編を見ていない世代が増え、同世代も記憶が薄らいで、私が愛したウルトラセブンは消えつつあった。
なので、「いつかゆっくり文庫でウルトラセブンを」と思っていたが、どうにも手が出なかった。『紅魔大作戦』の経験で、機が熟したのだ。
旋風計画の嶋田さんを紹介する動画の直後で、小泉八雲か、せめて文学をやりたかったけど、勢いで作ってしまった。まぁ、「名前は知ってるけど読んだことはない名著」と思えば、私が紹介する意義もあるだろう。
※他人の星のため戦い尽くしたウルトラセブン
かちん
正月に、録画しておいた『ウルトラマンタイガ』を視聴して、かちんと来たわけよ。
タイガに限らないが、昨今のウルトラマンは怪獣退治をよしとせず、背後にいる悪い宇宙人を断罪するんだけど・・・そのくせ「宇宙人を差別してはいけない」と諭してくるんだよね。
友好的に正体を明かした宇宙人はいない。こっそり地球にやってきて、名前や顔を変え、戸籍を偽って潜伏している。彼らは特殊な能力や装置をもち、地球人に鬱屈した感情があって、ときどき町を破壊するが、地球の法律で裁かれた事例はない。だけど宇宙人を警戒してはいけないって? 狂ってる。
牛乳を飲むとき匂いを嗅ぐことは、差別じゃない。
すべての白い液体が、新鮮な牛乳とは限らないのだから。
ふと、『ウルトラセブン』を思い出した。
地球は狙われている──。だから防衛軍がいて、ウルトラ警備隊が調査する。しかし敵性がない宇宙人もいるから、すぐ攻撃しない。しかし撃たれてからじゃ遅い。警戒しつつ意思疎通をはかり、かぎられた時間と情報の中で決断する。そこにドラマがあった。
エピソード選び
シリーズから動画化する1本を選ぶのは大変だった。『刑事コロンボ』では『殺人処方箋』、『スター・トレック』では『謎の球体』を選んだが、『ウルトラセブン』ではどれがいい?
『ウルトラセブン』は私を敏感にしてくれた。
侵略者が知的とかぎらない(湖のひみつ)。
隣家に四次元空間がある(怪しい隣人)。
地底でなにかの基地が建設されている(地底GO! GO! GO!)。
怪獣に罪がなくても戦わねばならない(超兵器R1号)。
ロボットが人間を支配する惑星がある(第四惑星の悪夢)。
団地は夜ごと入れ替わる(あなたはだぁれ?)。
悩んでいたら、ふと影法師に赤いリボンが見えた。
ダーク・ゾーンはルーミア? そうか!
それで決定。いい加減と思うだろうが、そんなもんだ。
先行作品
ニコニコ動画で「ウルトラセブン」タグを含む動画は1754件。再現ドラマ系では、かめ吉(ダヨーP) さんの「キクトラセブン」と、泉プロダクションさんの「東方×ウルトラセブンシリーズ」が双璧かな。
泉さんはウルトラセブンで文庫系動画を作る予定はないそうなので、やってみることにした。
- 人気の「ウルトラセブン」動画 1,754本 - ニコニコ動画 2020/01/12
キャスティング
ルーミアからスタートした企画だが、キャスティングは難航した。
ウルトラセブンはなんとなく魔理沙。主人公体質で、未熟な好青年のイメージがある。声も聞き取りやすい。セブン=赤い巨人=霊夢、という発想もあったが、テストショットを作ると違和感があった。霊夢は超越的な存在だから、ウルトラマン(初代)のほうが似合う。
※テストショット:霊夢セブンは人類に興味なさそう。
アンヌ=美女=早苗、もテストショットを作ったが、やはり違和感があった。「平成ウルトラ警備隊」のカザモリ隊員&サトミ隊員ならアリかもしれない?
それより早苗は宇宙人が似合う。「湖のひみつ」のピット星人とか。
「地球人の男性は可愛い娘に弱いってことがわかったんだもの、うふふ......」
※レイサナも似合わない。
※すわキング、さなえ@ピット星人
『紅魔大作戦(スター・トレック)』が頭に残っていたから、ウルトラ警備隊は紅魔館メンバーを当てはめたが、うまくハマらない。そこで『黒後家蜘蛛の会』メンバーを配役。ソガ隊員は霊夢だったが、霊夢は注目を集めてしまうため、合わなかった。
ペガッサ物語
YOUは何しに秘密基地へ?
ペガッサ市の工作員は、動けないほどの重症を負ってアンヌの部屋に隠れていたという。おいおい、ここは地球防衛軍の秘密基地だぞ? 納得できる説明がなかったので、工作員サイドの事情を妄想してみた。
ペガッサ市の動力系統が故障した。
迷走をはじめ、地球と衝突する可能性が出てきた。この時点では重大事故と認識されていなかったが、万が一にそなえ、工作員が地球に送り込まれた。
(任務)ペガッサ市が機能回復しなかった場合、地球を破壊せよ。
※ダーク・ゾーンをまとって地球に向かう。
※爆弾を設置し、異次元に隠した。ペガッサ市の機能回復を信じて、起爆させなかった。
※地球防衛軍に潜入。ペガッサ市を破壊する能力がないことに安堵した。
このとき工作員は変電施設にふれて、ダーク・ゾーン(携帯型暗黒空間)を損傷してしまった。
停電にまぎれてアンヌ隊員の部屋に隠れ、自動回復を待った。回復後に地球を爆破しても間に合う。
- ステルス【不可】 野蛮な地球人に見つかってしまう。
- 宇宙航行【不可】 ペガッサ市に戻れない。
- 通信 【不可】 ペガッサ市の状況がわからない。
- 爆弾の遠隔操作【可能】 ぎりぎりまで待とう。
工作員は北極に超兵器があることを知らなかった。
地球の科学力ではより遠い位置でペガッサ市を破壊しないと安全を確保できないこと──つまり地球にとっての阻止臨界点は自分より早いことに気づかなかった。
工作員は地球の軌道を変える能力の有無を確認しなかった。当然あると思っていたし、ペガッサ市の機能回復を信じていたから、優先順位が低かった。
※野蛮人がわかるように説明。
ペガッサ市民も故障を甘く見ていた。動力が来ないため修理装置が機能せず、工場が沈黙。全市民は窒息死した。窒息を免れた市民がいたかもしれないが、修理できない以上、地球との衝突は避けられなかった。
地球人が空気がなくなった場合を考えないように、ペガッサ市民は科学力が使えなくなることを考えなかった。動力が来ない。こんなことで強大な宇宙都市が滅びると思っていなかった。
※沈黙するペガッサ市。
工作員はペガッサ市が応答しないことに不安を感じていた。ダンが「ペガッサ市を破壊した」と言っても信じなかったが、「おそらく彼らはすでに」と言われて事態を理解した。
航行力だけでなく、偏向シールドや迎撃機能も働かなかったのだ。ということは...
※即座に地球を破壊しても、ペガッサ市の運命は変わらなかったが、それでも彼は悔やむだろう。
どうすればよかったのか?
ペガッサ市民は驕っていた。油断していた。想像力が欠けていた。
地球を(科学的に)下等と見下さず、救援を求めていれば、ちがった未来があったかもしれない。
え? 人間はそんなに愚かじゃないって?
そのセリフを大東亜戦争がはじまる前の日本で言えるかな?
コメンタリー
上記、ペガッサ星人の事情を踏まえつつ、物語を見てみよう。
オープニング
まず世界観を知ってもらう。テーマ曲に合わせた説明は【ゆっくり文庫】の十八番だな。作り方は、文章を書いてタイムラインに乗せ、曲を流す。すると尺やら盛り上がりが合わないから、文言を調整する。何度も繰り返すと、あつらえたようなナレーションができあがる。やってみそ。
伝えるべきプロットは3つ。
- 地球は狙われている。
- ウルトラセブンは、ウルトラ警備隊7番目の隊員。
- これはウルトラ警備隊の物語。
ウルトラセブンがウルトラ警備隊7番目の隊員という設定は、じつは本編中で言及されていない。またキリヤマ隊長が勝手につけた名称なのに、宇宙人も知ってるという不整合もあったが・・・まぁ、当時はだれも気にしなかった。『ウルトラマン』(1966)では登場する怪獣や宇宙人の名前が冒頭に表示された。そーゆー時代である。
余談だが、『機動戦士ガンダム』(1979)で戦争中の連邦軍とジオン軍が互いの新兵器の名称がわからず、「木馬」とか「スカート付き」と呼ぶのは新鮮だった。そういやそうだよなー。
※キリヤマ隊長はダンの正体を知っていたのかもしれない。そう考えればいろいろ腑に落ちる。といった妄想は『ウルトラマンメビウス』(2006)に結実した。
地球防衛軍
ウルトラセブンに登場する地球防衛軍の英語名はTDF(Terrestrial Defense Force)である。昨今はゲーム『THE 地球防衛軍』(2003-)の影響で、EDF(Earth Defense Force)と誤解する人が多いかもしれない。
じつはテレビ本編で、何度か「PDF」の略称が使われる。Planet Defense Force だろうか? ウルトラセブンの世界観は彫刻家・成田亨さんによってかなり統一されているが、それでもミスはある。
※ウルトラ警備隊のマーク:認知度が低いので出さなかった。
※「PDF」の略号がときどきある。
アンヌの部屋
アンヌは部屋に妙なものがいると気づき、ダンをたよる。ダンはよく調べもせず、「弱虫さんだなぁ」とアンヌの額をこづく。影法師を見つけ、臆病な生き物とわかると、客人としてもてなす。お茶を淹れたり、あれこれ世話を焼くのはアンヌ。ダンは礼も言わず、自由に歩き回る。
なんでもないシーンだが、当時の「亭主、妻、客人」の意識関係が見て取れる。これを再現すべく、チルノ@アンヌがお茶をそそぎ、魔理沙@ダンがお礼を言わない演出を加えた。
※アンヌの部屋:まるっきり亭主のように振る舞うダン
※よしあしは別にして、そういう意識だった。
ダーク・ゾーンの説明はない
「ダーク・ゾーン」はペガッサ星人がまとう暗黒空間の名称だが、本編中に説明はない。説明しようと思ったが、自分の弱点をさらすようでおかしいと判断した。
ダーク・ゾーンとの接触は3度。雑誌は吸い込まれ、瓶入りジュースは消えて、ハンガーはへし折られた。ハンガーを折ると強そうになるので見合わせた。
作っていて気づいたが、飲食するところを見られたくないのは、内部に通じるダーク・ゾーンの穴(弱点)の位置を見られたくなかったのかもしれない。
※いま見るとしょぼいが、当時はこれで十分だった。
※ダーク・ゾーンの機能を説明するシーンも考えたが、カット。
呼び名が欲しかったから、チルノに「影法師さん」と読んでもらった。またオリジナルよりセリフを増やしたことで、チルノ@アンヌは「疑うことを知らないピュアな少女」という雰囲気になった。
そんなアンヌをちらちら見る宇宙人、魔理沙@ダン。恋の予感。
ビデオシーバー - カメラはどこに?
ビデオシーバーを、腕時計型テレビ電話と思ってる人が多いが、さにあらず。空中に見えざるカメラを出現させ、自分を撮影させる装置なのだ。本編映像を見てくれ。モニタは腕にあるが、カメラはどこだ?
ちなみにビデオシーバーに時計はないため、隊員は右手に腕時計をしている。
※あこがれのビデオシーバー
※ビデオシーバーに見えるだろうか。
司令室 - 危機を視覚化
ウルトラ警備隊6名が揃うと画面が狭くなるので、ソガ隊員とアマギ隊員は交互に出番を消した。
※司令室:人数を絞った
空いたスペースで情報表示。やはり視覚化されるとわかりやすい。もちろん雰囲気重視の適当作図である。
画面で見るペガッサ市の大きさは500メートル程度。模型の制約によるものだろうが、ちと小さい。第二デス・スターと同程度なら、直径160キロ。しかし直径10-15キロのチクシュルーブ衝突体で大量絶滅(K-Pg境界)が起こったことを考えると、大きすぎる。
ややこしいので、サイズについては言及しないことにした。
※ペガッサ市の航跡
※阻止臨界点
余談:ペガッサ市の質量は地球の80万倍?
「ペガッサ市の質量は地球の80万倍」と記憶していたが、よくよく聞くと「地球から見れば芥子粒のような大きさだが、都市を造っている物質の密度は地球の約8万倍だ。」と言っていた。ゼットンの「一兆度の火の玉」と同じく、当時のいい加減な数字と思い込んでいた。
「地球の80万倍の質量だとブラックホールになる」というコメントもあった。しかしブラックホールになるための質量は太陽の30倍──地球の990万倍だから、80万倍じゃ足りない。とはいえ木星の質量が地球の約318倍だから、地球の80万倍は途方もない。
ま、密度80万倍も異常だ。1リットルの牛乳パックが800トンになる。そんな物質を科学力で動かしていたなら、動力が止まった状態ではなにもできないだろう。
ウルトラセブンの放送開始は1967年だから、人類初の月面着陸(1969年)の2年前である。当時の人たちが見ていた月や星は、いまとちがっていた。
司令室の緊迫感はカット
怪電波は本当か? ペガッサ市を破壊すべきか? オリジナルドラマではキリヤマ隊長とマナベ参謀が神経を尖らせる。ウルトラ警備隊は地球防衛軍の下部組織だから、参謀の命令は絶対だ。こうした上下関係もリアルだった。
※緊迫するウルトラ警備隊
文庫版でも再現したかったが、テンポが悪くなったのでカットした。
霊夢がソガ隊員だったとき、ナレーションは幽々子だった。女性の声で、「地球は狙われています」「宇宙空間へ行くことが可能です」と、丁寧口調で語られるのは新鮮だった。
※タケナカ参謀(幽々子)に命令されるキリヤマ隊長(紫)
またダンが影法師の存在を通報するシーンもカット。人を集めておいて攻撃しないでくださいと言うダンもダンだが、その言葉を信じて解散を命じるキリヤマ隊長もいかれてる。地球防衛軍は第3話「湖のひみつ」でもピット星人の侵入を許している。警備ガバガバ。
ウルトラホーク1号、宇宙へ
ウルトラホーク1号の発進シークエンスは省けなかった。ウルトラセブンの魅力の半分はメカニックだからね。とはいえ本編映像は流せないし、MMDで再現する技術もない。文庫動画らしく、ナレーションを交えて再現した。
いいかい? 大事なことだよ。ウルトラホークが分離して1号、2号、3号になるのではない。1号は大型攻撃機で、α、β、γに分離・合体する。2号はロケット。3号は大気圏内の戦闘機だが、おもにマグマライザーの輸送に使われた。地底戦車(マグマライザー)、潜水艇(ハイドランジャー)に番号はない。憶えておくように。
ウルトラホーク1号の操縦席
ウルトラホークは当初、模型写真を使っていたが、欲しい角度がないため、MMDモデルに切り替えた。といっても動画を作る技術はないので、静止画を出力し、YMMで動かしている。
※テストショット:ソガ隊員は霊夢で、ホークはフィギュアで、ヘルメットがなかった。
※本番:ヘルメットもMMDを切り抜いている。
※ウルトラホーク1号のコックピット
※JujuVenileさん制作のウルトラホーク1号。β号のコックピットにキュラソ星人が見える。
ウルトラホーク1号(α号)のコックピットは広く、単座5名乗りだが、画面が狭くなるので複座4名乗りにした。コックピット内の背景を見つけられなかったため、飛行中のウルトラホーク1号にして、動かした。苦肉の策だが、画面に動きが出たと思う。
ペガッサ市
ペガッサ市はタジン鍋をつなげたような形状をしている。そのイメージが強かったから、ほかの映像に差し替えず、オリジナルを使ってしまった。ほんとはよくないんだが、しゃーない。
ペガッサ市周辺をウルトラホーク1号が飛び回るシーンは、めちゃくちゃ苦労した。緊迫感を出したいが、沈黙の重みも出したい。試行錯誤を重ねた。
※いろんな角度、タイミング、時間を試した。
超兵器R0号
オリジナルドラマは爆撃機が飛来するが、より無機質なミサイルにした。超兵器R0号はもちろん、「超兵器R1号」のもじり。R1号より威力を弱めている。
※超兵器R1号の爆発力は、新型水爆8000個分。
※外観は「ドラえもん」の地球破壊爆弾。
※地球破壊爆弾
ペガッサ市の爆破
ペガッサ市(の模型)は爆破され、木っ端微塵になる。爆破シーンは絶対不可欠ではないが、やはり爆破のカタルシスは大きかったのだろう。倉庫に保管してもいずれ朽ちる。爆破したほうがプラスが大きいのかもしれない。
※破壊されるペガッサ市
工作員のターン
オリジナル版の工作員は、唐突に行動を開始する。アンヌを呼び捨てにして、宇宙人の正体をさらし、そのままドアを飛び出し、夜の町を駆け抜け、日比谷公園に向かう。アンヌは驚いてダンに伝える。
※正体をあらわしたペガッサ星人
文庫版では、絆創膏が取れて立ち上がる。キリヤマ隊長のセリフを繰り返し、影法師のまま飛び出す。冷静に考えると、アンヌはキリヤマ隊長に報告すべき事案だ。ダンがポインターでペガッサ星人を追いかけるのも奇妙だが、リアリティよりテンポを優先した。
※高い位置になって、口調が変わる影法師。
日比谷公園というロケーション表示は必要ないが、マニアが喜ぶと思って記載した。
余談。当時のアニメや特撮は海外輸出のため、日本とわかるものを隠していた。GHQによる検閲の余波もあっただろう。戦争で負けた国で、「金髪の美男美女が、R県で活躍する」といった国籍や人種を感じさせない描写が好まれる背景は複雑だ。
実相寺監督はそうした風潮や方針に逆らって、下町やらちゃぶ台を出したのである。
オリジナル版の工作員は、「アンヌの部屋からでも爆弾を爆破できた」と言うが、だったら公園まで走らなくていい。私は、アンヌとダンが脱出できるよう基地から離れたと解釈したが、そこまで説明しなくていいだろう。
爆弾はどこから?
オリジナル版の爆弾は、ペガッサ星人の操作で宇宙から落ちてきて、地球中心核に向かった。しかしこの時点でペガッサ市は破壊されており、爆弾がどこにあったか気になる。そこで異次元から爆弾を呼び出し、起動させることにした。
細かいことだが、よりスマートになったと思う。
※テストショット:爆弾はオキシジェンデストロイヤーだった。
ペガッサ星人
「赤いリボンの影法師」はよかったが、いよいよ宇宙人の正体を見せなければならない。当初はフュギュアの商品写真を切り抜いて使っていたが、しっくりこない。ルーミアに黒頭巾を被せたら、コレダと確信した。
※テストショット:実物と内面? ちがう?
※念頭にあったイメージ。(平成ウルトラセブン「空飛ぶ大鉄塊」(1999)より)
※MMDモデルも考えた。
セブンは悩まなかった
※セブンは変身前にぼかしを入れてみたが、おかしかったので没になった。
セブンの中途半端な変身は最初から決まっていた。ふつうにしゃべらせるつもりだったが、ペガッサ星人が感情表現できるようになったので、無表情に徹した。口パクもしない。昨今のウルトラマンは中の人がよく見えるから、戸惑うかもしれない。
短い対決
怒ったペガッサ星人はセブンを攻撃する。本来は武器(ペガッサガン)を使うのだが、面倒なので超能力にした。
ウルトラセブンは光線を避けて、アイスラッガーを繰り出すが、弾かれる。「カキン」と音がするが、映像は額をかすったように見える。ペガッサ星人はスタコラ逃げていくから、「セブンに勝てない」と判断したようだ。
※ペガッサ星人の対決
文庫版のるーぺがは、「ここでセブンと戦ったり、地球を破壊しても意味はない」と気づき、爆弾を止めて去っていく。魔理沙セブンは工作員を追うより、爆弾の始末を優先した。おそらく宇宙空間でエメリウム光線を照射したのだろうが、そこは描写しない。
ペガッサ星人にも理性と思いやりがあった。わかりあえる可能性があった。
この演出で悲壮感が増したと思う。
エンディング
ダンとアンヌがパトロールに出かける。オリジナル版は夜明け前の停車状態、文庫版は新宿で走行中にした。オリジナル版のアンヌは防犯カメラの影を指差すが、あんなところにダーク・ゾーンがいるだろうか? さりとて路地裏を再現するのも面倒だから、暗がりで表現した。
※エンディング
※擦過する白い円で街灯を表現している。
ダンとアンヌの会話に悲しみは感じられない。ペガッサの悲劇に、自分たちの責任はない。この乾いた感覚がたまらない。
※正座Pさん制作のポインター:カスタマイズしたところがわかるかな?
※エンドカード
派生作品
最後にペガッサ星人が登場する映像作品を紹介しておく。時間の経過とともに、ペガッサの悲劇が忘れられ、防衛の難しさが薄らいでいる。いかんぞ!
2002年『ウルトラセブン EVOLUTION』第一話「ダーク・サイド」
ペガッサ市が爆発する直前に脱出した一団があった。彼らは35年の歳月をかけて復讐を企てていた。
回を重ねるごとに重くなる「平成ウルトラマン」の最終章だから、状況をひとくちに説明できない。「平成ウルトラセブン」は低予算と、相次ぐ予定変更と、キャストの死亡などによって、迷走してしまった感じがする。素晴らしいプロットを活かしきれてない。もったいない。
だれかリメイクしてほしい。だれか・・・。
2014年『ウルトラ怪獣擬人化計画』 ペガッサさん
キャッチコピーは「気弱なかくれんぼ宇宙人ペガッサさん」。何をか言わんや。
2017年『ウルトラマンジード』 ペガ
『ジード』のヒロイン。ペガの故郷は存在するようだが、詳細不明。外見と「影に潜む」特技だけ引き継いだ別キャラである。前述のペガッサさんから着想したと言われているが、真偽不明。
※『ウルトラマンジード』 ペガ
雑記
【ゆっくり文庫】はすでに映画やドラマを扱っているので、特撮があってもおかしくない。しかし投稿後は驚く声が多くて驚いた。ま、「らしくないこと」をするときが一番楽しい。
近ごろはリスペクト動画も増えたから、本家もウカウカできなくなった。
続編を作る予定はないが、私の方式と素材を使って動画作成する人が出てくるかもしれない。よって素材を下記に公開する。Googleドライブの中は随時整理される。
【ゆっくり文庫】素材置き場(仮) - ニコニ・コモンズ
YBOOKS / 小道具など / _ウルトラ /
何度も繰り返して恐縮だが、スケキヨさん、始苑さんが「きめ田一耕助」を使ってくれたのは嬉しかった。
[第四惑星] ウル星セブン 美しき侵略者
私が初めて買った同人誌は、「ウル星セブン」(1987年)である。「うる星やつら」と「めぞん一刻」のキャラクターで、「ウルトラセブン」第3話「湖のひみつ」を再現したもの。おもな配役は、ウルトラセブン(あたる)、エレキング(ラム)、ピット星人(了子)。大胆に翻案されており、著者特有のセンスが心地よい。
検索したら、なんと復刻再販していた。
※[第四惑星(THE FORTH PLANET) (弾超七、文月始)] ウル星セブン 美しき侵略者
唐突ですが、大昔に弾超七のPNで描いた
— 赤瀬昇 (@beta_nr) August 7, 2018
うる星やつらとウルトラセブンのコラボ企画
「ウル星セブン」の再販を行うことになりした。
日-東カ35a 第四惑星で販売予定です。#C94 #うる星 #ウルトラセブン pic.twitter.com/nkp6mdhxUc
この同人誌を読んでいたから、【ゆっくり文庫】で「ウルトラセブン」をやってみようと思った。そしてこの同人誌を意識したから「湖のひみつ」を避けてしまった。いやはや。
※エレキング[試3]。ピット星人(さなえ)に使役されるなら、すわこ&かなこの成分を合成した方がいいか?
とりあえず続編は考えていない。
2020/12/29 - エンドカードをニコニコ静画に投稿した。