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[レビュー2007年09月09日に発表された 

生きる (主演:松本幸四郎)

ikiru

おおむね、よいリメイク

黒澤明の映画「生きる」(1952)を、現代(2007)に置き換えたドラマ。時代背景をアップデートしているが、ストーリーはオリジナルに忠実。明るい画面とハッキリした音声に戸惑いもあるが、わかりやすく演出された、よいリメイクだった。

1952 2007
渡辺勘治 志村喬
冴えない、鬼気迫る
松本幸四郎
すてき、貫禄
病気 胃がん 膵臓がん
医者の態度 事実を伏せる 告知する
息子との思い出 出征、盲腸 いじめ、反抗
メフィストフェレス 伊藤雄之助
いかつい小説家
北村一輝
悪人面のカーディーラー
遊びの金 5万円 500万円
変化のあかし おしゃれな帽子 紅いマフラー
事務員 小田切みき
幼女とオバサンの合成、貧乏
深田恭子
天真爛漫な美女、不自由なし
問題の場所 下水漏れ ゴミの不法投棄
息子の気づき 通帳と印鑑
覚悟して公園に行った
モルヒネ
病気を隠して仕事をした
事務員のその後 不明 立候補した助役のウグイス嬢
同僚たちのその後 変化なし

渡辺勘治 - 隠しきれぬ存在感

オリジナルの志村喬に比べると、松本幸四郎はかっこいい。やる気がない状態でも貫禄があるから、やる気になったら手がつけられない。ヤクザの脅しも効かない。オリジナルの志村は、「死にてぇのか」と胸ぐらを掴まれ、なんとも言えぬ笑みを浮かべる。常人に理解しがたい境地。あれに比べると松本版は浅い気もするが、わかりやすい。だから安心して見ていられる。これはこれでアリ。

2007 生きる
※やる気がない状態でも貫禄がある

2007 生きる
※ちゃんと引き出しに私案が入ってる

2007 生きる
※ヤクザに脅されたときの反応

メフィストフェレス - 清々しい出会いと別れ

メフィストフェレス役のカーディーラー(北村一輝)は素晴らしかった。渡辺を悪い遊びに連れ回すが、渡辺が楽しんでないことに気づき、親愛の情を抱くようになる。カネを受け取らず、来年のハワイに誘うが辞退され、故郷の墓参りをすると笑う。清々しい別れ。オリジナルの小説家(伊藤雄之助)と同じくフェードアウトするが、彼にもよい変化があったと思える。
帽子は赤いマフラーに置き換えられた。志村喬には無理だが、松本幸四郎なら似合う。

2007 生きる
※どちらも強烈

2007 生きる
※はじめは悪人っぽいが

2007 生きる
※清々しい出会いとなった

事務員 - 美女が演じる醜悪

深田恭子が演じる小田切サチは、印象がよろしくない。とよ(小田切みき)は馬鹿で、行儀が悪く、身なりも貧相。渡辺は破れた靴下が気になって、新しいのを買ってやる。リメイクのサチは美しく、何不自由なく暮らしている。そんな娘に靴などを買ってやるのは、いかがわしいだけだ。

言動も共感できない。サチは縁故採用でありながら仕事をせず、文句ばかり。工場の派遣社員に転職するが、エンディングではウグイス嬢になっていた。モノづくりの喜びはどこへやら、美貌を売り物にしている。しかも支援しているのは、渡辺の功績を奪った助役。サチにとって渡辺は重要な人じゃないし、公園造成にまつわるエピソードも知らないが、あまりにも無情。サチはこの上なく美しいのに、現実の醜悪さを象徴するキャラクターになっていた。

2007 生きる
※どちらも天使じゃないが、リメイクはギャップがひどい

2007 生きる
※モノづくりの喜びを伝えておきながら、ウグイス嬢っすか

ほかの人々 - だれがこころを知るだろう?

渡辺の兄夫婦は登場しないが、息子夫婦の役回りはオリジナルと同じ。オリジナルは通帳と印鑑を見つけたことで、父が死を覚悟して公園に向かったと悟る。リメイクはモルヒネの錠剤を見つけたことで、病気を隠していたことを知る。なぜ教えてくれなかったのか? オリジナルより劇的だが、父に拒絶されたようにも見える息子があわれ。なんらかのフォローがほしかった。

2007 生きる
※どちらも父の気持ちがわからない

エンディング。新しい課長のもと、役人たちは元の日常に埋没しきっている。渡辺を慕っていた部下・木村(ユースケ・サンタマリア)は、自転車で公園を見に行く。助役の選挙カーが通り過ぎる。もう誰も渡辺の仕事を覚えていない。ただただ無情。
市役所や同僚たちが変わらないのは、オリジナルもリメイクも同じ。オリジナルは公園と空のカットで終わるが、リメイクは自転車で去っていく木村の後ろ姿で終わるため、やや突き放した印象を受ける。

2007 生きる
※お役所仕事に埋没する木村

比較すると不満を述べているように見えるが、さにあらず。オリジナルは声が聞きづらく、見てて不安になるシーンも多かった。万事が万事、オリジナルが優れているわけじゃない。よくできたリメイクだと思う。

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