蛇にピアス Snakes And Earrings

2008年 日本映画 3ツ星 痛い

成長のない物語

あらすじ

19歳のルイはたぐいまれな美貌を持ちながら、人生に目的も実感も得られず、毎日ふらふらしながら過ごしていた。
ある日、先端が蛇のように分かれた舌(スプリットタン)をもつ少年・アマと知り合い、同棲を始める。ルイは自分も同じような舌になりたいと、アマに施術した店を紹介してもらう。店長である彫り師のシバは、アマ以上に人体改造に傾倒した人物で、サディストだった。マゾヒストのルイは心が騒ぎ、スプリットタンと刺青を掘ってもらう対価として肉体関係をもってしまう。ふたりの男性に愛されながら、ルイの人体改造は進んでいく。
ルイの変化に気づいたのか、アマは苛立ち、ヤクザの舎弟を殺してしまう。警察に追われる身となったアマを、ルイは匿おうとするのだが......。

問題を抱えた主人公が試練に直面し、成長する物語を「ドラマ」という。しかし本作のルイは最後まで成長しないため、ドラマはなかった。痛みに耐えること以上に、生きてる実感を得られる方法を見つけられなかったルイは、おそらく数年以内にシバに殺されるだろう。あるいは健康を害して、捨てられるか。事件を経てそうなったのではなく、最初からそういう人物だった。
おそらくシバの目的は、アマを苦しめることだった。そのためルイを取り上げたが、やりすぎてしまい、アマを殺してしまった。ルイは真相に気づきながら、目をつむった。アマと同じように破壊されることを待っているのだ。救いようがない。

十代のころは虚無感に囚われることもあるだろう。しかし無為な時を過ごし、いたずらに身体を傷つけたところで、答えは見つからない。品行方正に生きることが正しいとは思わないが、命を浪費するだけの人生に共感できるはずもない。
本作はR-15指定を受けているため、子どもは見られない。しかし子どもこそ見るべきだ。そして、こんな愚かしい人生を歩まぬよう、いまを見つめ直してほしい。

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