夫婦別鍋

2005年 生活 男と女
夫婦別鍋

夫婦と言えども、すべてが一致するわけじゃない。

なにに感動するか、どこに手間をかけ、なにを無視するか?
多くの面で一致するから交際して、結婚するわけだが、異なる面もある。たとえば……味覚だ。

私は、麻婆豆腐が大好きだ。
それも辛口がいい。だけど花椒は苦手。辛ければいいわけじゃない。限度とバランスがある。

一方、妻は麻婆豆腐を食べる習慣がなかった。
結婚してから食べるようになった。今では好きなメニューの1つになってくれたようだが、辛いのは駄目らしい。味噌系が好みのようだ。

レストランで食べたり、レトルトならいい。我慢できる。
しかし手作りになると、どちらの味覚にあわせるかが問題になる。

──妻が作ると、やたらと辛くなる。
旦那は辛口が好きだと思って、やたらめったら辛くするわけだ。自分の味覚を信じられないので、歯止めが利かない。結果、私に文句をいわれる。
「辛すぎるよ」
この一言でケンカになる。妻は「もう、わかんない!」といって、そっぽ向く。

──なので私が作る。今度は、妻が怪訝な顔をする。
「これがいいの?」
私としては悪くない出来映えだったのに……悲しい。

もっとも簡単な解決方法は、鍋を分けることだ。
あるいは、麻婆豆腐を作らないこと。
真っ正面から向き合わず、問題を避けることも夫婦の知恵だ

だがしかし……旦那の鍋、妻の鍋?
夫婦で鍋を分けるのは……やっぱり避けたい。
もちろん、片方に我慢を強いるのはよくない。双方が、最大限に満足できる味を探求したい。

たとえ見つからなかったとしても、探求することに価値があるはずだ
そう思いたい。