東京へ
2005年 生活 住まいふと思い出したことを書いておく。
※最近、こんなのばっかりだな。
私の友人に、Hという男がいる。高校以来、18年の付き合いだ。Hは、高1のころから東京(都会)にアコガレを抱いていた。
「おれは東京の大学に進学して、東京の会社に就職して、東京で暮らすんだ!」
そう断言するHを、私は奇異な目で眺めていた。
◎
Hの家は、千葉の田舎にある農家だった。何度か遊びに行ったけど、Hの家は古く、とても大きかった。その地域には、Hの姓をもつ家が多かった。聞いてみると、Hの家が本家になるらしい。しかもHは長男。つまり、H一族の跡取り息子というわけだ。
Hは、田舎暮らしを嫌っていた。
たとえば、こんな話を聞いたことがある。
小学生のころ、Hが部屋で勉強していると、雨が降ってきた。洗濯物を干してあることに気づいて階下に降りると、となりの家(分家)のオバサンが、洗濯物を取り込んでくれていた。「あぁ、いたの? 取り込んでおいたよ」というオバサン。感謝の言葉を述べつつも、Hは違和感を抱いていた。
(その家の住人がいるのに、なんで勝手に入ってくるのだろう?)
田舎は共同体意識が強い。農家ならなおさらだ。何世代にもわたって、みんなで協力して生活してきた。そんな結束の強さを、Hは嫌っていた。自分と他人を分ける境界線があいまいなことがイヤだったらしい。
だから東京(都会)へ行く。地域の結束がうすい都会へ行く。となりに住んでいるヤツの性別さえわからない都会へ行く。
Hは、そのとおりに生きた。もうほとんど実家には帰っていないらしい。
◎
私は田舎で暮らしたことがない。だから、その素晴らしさも、煩わしさもわからない。しかし都会でイヤ~なものを見てしまうと、つい田舎にアコガレてしまう夜もある。
アッサリ都会か、それともコッテリ田舎か?
今夜のご注文は、どっち?