階上の住人
2007年 生活 住まい
2階の足音がうるさい。
私は1階に住んでいるのだが、2階に越してきた住人がどうにも騒がしい。ドタドタドタドタタターーーと、わざとやってんのかと思うほど響く。注意してやろうと思うのだが、その都度、嫁に制止される。
……嫁の言い分はこうだ。
「2階にはどんな家族が住んでいるかわからない。
もしかしたら、頭のおかしな人かもしれない。
注意されたことで逆恨みして、さらに大きな物音を立てたり、
想像を絶する報復があるかもしれない。
とにかく他人とは関わらない方がいい。
我慢できないほどの騒音じゃないから、我慢しましょうよ」
まぁ、たしかに他人は怖い。
……だが、私は我慢できなかった。
ある夜、私は文句を言った。嫁は先に寝ていたので、怒れる私を止めるものはいなかった。インターフォンを押して、なるったけ丁寧な口調で苦情を申し上げた。
◎
翌日の夜、我が家のインターフォンが鳴った。玄関を空けると、2階の奥さんがお詫びに来ていた。「申し訳ありません。以後、気をつけますから」と頭を下げ、お菓子を置いていった。
それ以来、ぴたりと足音がやんだわけじゃない。まだ響く夜もあるが、だいぶ静かになった。なんとなくだが、彼らも気をつけてくれているような気がする。
言いたいことを言ったので、気分はスッキリ。むやみに他人を恐れることはないんだ、と思った。
ふと気がついた。
ひょっとして彼らも、階下の住人(私たち)を恐れたのかも?
お菓子は美味しかった♪