大工は自分の家を建てられるか?

2009年 哲学 仕事
大工は自分の家を建てられるか?

さまざまな客のニーズに対応できる優秀な大工は、自分の家もうまく建てられるだろうか?

これは1つの思考実験。専門知識のない客の意見に振り回されるより、自分の作りたいものを作る方が簡単そうに見えるが、そうでもない。自分で欲求し、自分で設計し、自分で承認するというサイクルは、自家中毒を起こしやすいのだ。わかる人には、わかってもらえるだろう。

どんな仕事にもパーフェクトはない。予算や期間のため手を抜くこともあれば、未来のために余計に手間をかけることもある。他人が住む家なら、責任ある妥協もできる。しかし自分の家となると妥協しづらい。あるいは妥協しすぎて、へっぽこな家になるかもしれない。まぁ、技術ある自分が住む家だから、なにかあったら修繕すればいい。ぶっちゃけ、永久に完成しなくてもいい。そう思うと、ますます作りにくい。

もちろん、自分の家を、きちっと建てられる大工もいるだろう。
自分しか食べないディナーを、ていねいに作れるシェフもいるだろう。

そういう人たちは、どのようにして自分を切り替えているのだろう?
自分自身が、もっとも扱いづらい客だと思う。