「まいど1号」の夢はどこへ

2009年 科技 宇宙
「まいど1号」の夢はどこへ

「まいど1号」が早くも引退するらしい。

「まいど1号」資金難で早すぎる"引退" (読売新聞 - 09月05日 15:27)
今年1月に打ち上げられた東大阪宇宙開発協同組合の雷観測衛星「まいど1号」の運用問題で、同組合は来月以降、管制を打ち切る方針を固めた。
アマチュア無線による交信だけは可能といい、同組合は「管制をやめればいつまで持つか分からんけど、できるだけ長生きしてほしい」としている。

打ち上げのニュースを見たときは、中小企業が超小型人工衛星を作って、打ち上げる時代に来たのかと感心したもんだ。衛星軌道に乗って、正常に動作していたのに、資金繰りで手放すことになろうとは......。
管制業務の費用は月150万円、年間では1,800万。
なんらかの収益モデルがなければ、継続運用は無理だな。

しかし打ち上げから8ヶ月しか経ってない。
資金繰りうんぬん以前に、そもそもの計画に問題があったように思える。「とにかく打ち上げれば、新たなビジネスチャンスもあるだろう」と考えていたのだろうか。「中小企業の夢」は、足元から崩れてしまった。

ついでに「まいど1号」のスペックを調べてみたら、イメージとはだいぶ異なる事実がわかってきた。「まいど1号(SOHLA-1)」の設計や開発、サポートは、JAXAが主体で進めていたらしい。「中小企業が作り上げた超小型衛星」という触れ込みは、マスコミの過剰報道だった。もちろん、東大阪宇宙開発協同組合がなにもしなかったわけではないが、技術力をふるわないなら、ビジネスモデルの確立を受け持つべきだろう。

とはいえ、日本の宇宙開発には法的制限もあるし、実現には十数年の時間がかかる。たとえば国際宇宙ステーション(ISS)の日本モジュール「きぼう」は、検討から完成まで28年かかっている。まだ中小企業が(主体的に)手を出せる段階ではないのかもしれない。

宇宙には夢があるが、夢だけではどうにもならない。
「まいど1号」は夢より現実を教えてくれたような気がする。