原発保険を考えてみる

2011年 社会 エコ 原発 災害
原発保険を考えてみる

 『沈黙の艦隊』という漫画に、やまと保険というアイデアが登場する。

 原子力潜水艦やまとは、日本政府にとっては平和利用の価値があるものの、世界各国には軍事的脅威だった。そこで、日本政府はやまとに莫大な保険をかけ、世界各国は配当を受け取る仕組み──やまと保険が提唱された。やまとが存在することが各国の利益になるため、軍事衝突が避けられる。経済原則を用いた新たな安全保障だった。
 この仕組みを、原発に応用できないだろうか?

 原発が効率的な発電方法で、その「技術」が完成の域に達しているのは事実だが、その運営や管理、危機対応といった「マネジメント」はあまりに未熟だった。
 マネジメントとは、資産を有効活用すること。現場にどんな技術があっても、科学者がどんな予測を立てても、マネージャーが無能なら真価を発揮できない。このさき東電が国有化されても、役人に適切なマネジメントができるとは思えない。余計な仕事を増やし、利権に毒されるだけだ。

 そこで「原発保険」を考えてみる──。
 すべての原子力施設に莫大な保険をかけ、事故があった場合の補償金原資とする。これで住民の安心感はアップするし、復興も早くなる。一方、ネーム(保険料を払う人)は、安全に関する無限責任を負う。事故が発生したり、被害が大きければ一発で破産するから、きちんとしたマネジメントを強く要求するだろう。
 マネージャーとネームは同一でもかまわないが、マネジメントのプロと資産家が同一とは限らないので、分けて考えた方がいい。日本政府がネームとなり、地域住民が配当を受け取ってもいいが、それだと税金や選挙の仕組みと変わらなくなる。
 まぁ、これは株式会社の仕組みでもある。株主は経営者を監督することになっているが、リーマンショックのように、暴走を食い止められない場合もある。

 目的は、マネジメントの強化だ。マネージャーが怠けたり、利権に毒されたり、無茶なことをしないようにするためには、どうしたらいいだろう? 部下に働かせる方法は本屋に並んでいるが、マネージャーを働かせる方法はよくわかっていない。なんかいい方法はないものかね。