それはいい命令、悪い命令?

2011年 哲学 原発
それはいい命令、悪い命令?

九州電力のやらせメール問題を見ていて、『キカイダー』のことを思い出した。

キカイダーは人造人間。善悪を判断するための「良心回路」が組み込まれている。しかし回路は不完全なため、キカイダーはいい命令と悪い命令の判断に迷いつづける。たとえばキカイダーは、ギルのロボット兵も兄弟として愛そうとするが、ロボット兵はギルの悪い命令(キカイダーを破壊せよ)に従って襲ってくる。やむなく撃退しても、キカイダーは兄弟を殺した罪に苛まれる。

九州電力は、原発再開を希望するメールを一般市民として投稿するよう、子会社の社員に命令していた。組織ぐるみで行われたいたことや、多くの社員が命令に従って投稿したことがわかってきた。命令を出した人、命令に従った人たちは、いまの騒動をどう認識しているんだろう?
(そんなこと言ったって、上の命令には逆らえないよ!)
と憤っているならいいが、
(この命令のどこが問題なの?)
と思っていたら、怖い。つまり、命令の善悪は判断できなくなっているわけだ。

キカイダーでも、「ロボットが命令の善悪を判断することはおかしい」と指摘される。「ロボットは、人間の命令に従うために作られたのに、人間に善悪を問うのはまちがっている」とプロフェッサー・ギルは主張する。なるほど、人間とロボットの関係においてはそうかもしれない。
あるいは、上司と部下の関係においても、そうかもしれない。
上司の命令に対して、部下が「まちがっています」と抵抗したら、当然、干される。ましてや子会社となれば、ますます逆らえない。立場の弱い相手に悪い命令を下した罪は重い。

進行中の事件だからどうなるかわからないけど、命令した人が罪を問われることはなさそう。そして命令に従った人ほど出世して、告発者は職場を去るのではないか? sengoku38のように。命令の善悪を問うのに職を失う覚悟がいるなら、誰も善悪など考えない。こうして会社には、不誠実な人ばかり残るのだろう。

いやな話だ。