党議拘束なんて百害あって一利なし

2012年 政治・経済 政治
党議拘束なんて百害あって一利なし

 映画『トイ・ストーリー3』で、バービーはこう言った。

Authority should derive from the consent of the governed, not from the threat of force!
権威は軍事的圧力ではなく、被統治者の同意から生まれなければならないのよ!

 シビれるねぇ。バービー人形とは思えないほど深い洞察に満ちている。なにか元ネタがあるんだろうか。
 このあと、ビッグ・ベビーが造反したことで、支配者ロッツォはゴミ箱に落ちる。上が命令しても、下が同意しなければ統治は成り立たない。含蓄あるシーンだった。

 さて、民主党が分裂しちゃいましたね。
 6月26日。消費税増税法案採決において、野田総理は党議拘束をかけたが、十分な同意が得られていなかったため、57名もの造反者を出してしまう。執行部は事情を斟酌するより、造反者をどう罰するかにかまけ、大量の離党者を出すことになった。
 あまりにお粗末だ。

 法案の内容より、小沢氏がどうのより、意志決定プロセスがひどかった。

 そもそも十分な同意が得られていれば、党議拘束をかける必要はなかった。党議拘束は、議員の信念を捨てさせ、投票による意志決定システムを無効化する。いわば、「暴力」である。それでも党議拘束という習慣があるのは、
「本当は反対なんだけど、党議拘束で仕方なくね」
 という言い訳を許すためだ。じつに好ましくない。

 党議拘束が絶対なら、執行部はつねに下々の同意を無視できることになる。実際、ごく一部の人たちで三党合意を決めてしまった。民主党は、そうした密室政治を批判してきたのに、なにやってんだか。まぁ、自民党もオープンな議論をしていないので、同じ穴のムジナだが。

 一連の報道では、
「党議拘束というルールを破ったから、処罰は当然」
 といった指摘が目立つ。なるほどルールは大事だが、これほど重要な法案に党議拘束をかける方がおかしいだろう。国民にとって重要なのはもちろん、民主党の根底をひっくり返す法案に、多数決さえ許さないのは横暴だ。
 なぜオープンに議論しなかったのだろう? 「民主党員に議論させても意志決定できない」と執行部が考えていたとしたら、それはそれでヤバイ。

 マニフェストを無視する執行部が、マニフェストを叫ぶ造反者を処分する構図もシュールだった。2009年に政権交代したとき、民主党がマニフェストを捨て、立役者の小沢氏を除籍する未来を、誰が予測しただろう?
 私は民主党を支持しないし、マニフェストを推進してほしいわけでもないが、このやり方はひどすぎる。弱者が権力を持つと、こうも豹変してしまうのか。

 問題は次の選挙だ──。

 もはや政党の公約も、政治家の主張も信用できない。党首選によって方針はひっくり返り、党議拘束によって投票も機能しないのだから。