「繰り返し型の囚人のジレンマ」に学ぶ政治

2012年 政治・経済 政治
「繰り返し型の囚人のジレンマ」に学ぶ政治

田中防衛大臣が集中砲火を浴びているが、まったく同情できない。

このニュースだけ見れば、自民党の追求はせこい。しかし過去をふりかえると、野党時代の民主党はもっと陰湿だった。やれ官僚にたよるな、やれ漢字を知らない、やれ絆創膏が気に入らないと、ことあるごとに審議拒否。自民党が詫びようが、譲歩しようが、態度をあらためず、その責任を転嫁した。

政権交代後は、脱官僚・政治主導を標榜して、みずから背水の陣をしいた。おまけに野田改造内閣は、失言の相次いだ一川防衛大臣を交代させ、「最強の布陣」と称したもの。なのにまた素人を任命するとは信じられない。野党の追及を予測できなかったのか、田中氏なら大丈夫と思ったのか……。そんな内閣で大丈夫か?

政治家はオトナなんだから、やられてもやりかえすな、と言いたいところだが、この状況を生み出した要因は民主党にある。まさに自業自得。ブーメラン政党とは、よく言ったもんだ。

問題は……この次だ。自民党はどのへんで溜飲を下げ、本来業務に戻るだろう? また民主党はウソまみれの過去を反省するだろうか?

……期待できないなぁ。

ゲーム理論や経済学に、「囚人のジレンマ」という問題がある。
詳細は省くが、互いに協力すればハッピーになれるのに、裏切った方がオトクだったり、裏切られたときのダメージが大きいと、互いに裏切って破滅してしまう事象を解き明かしている。

囚人のジレンマ - Wikipedia

現在の政治にあてはめると、自民党と民主党が協力すればハッピーになれるのに、自民党は民主党に裏切られた経験から、民主党は自民党を裏切った経験から、まったく協力できなくなっている。このままでは破滅だ。

「囚人のジレンマ」が1回かぎりの場合、両者はつねに裏切りを選択する。しかし何回も繰り返すと、裏切りは裏切りを招くため、互いに協力しあうようになる。これを、「繰り返し型の囚人のジレンマ」という。
たとえば、1回しか取引しない外国企業なら、不良品を混ぜてもいいだろうと考える。しかし何回も取引する国内企業にはまずい。理性的な人間は、より近い関係で、報復される可能性がある相手を裏切らないものだ。
とはいえ、つねに裏切ってばかりの相手や、記憶力に乏しい相手とは、信頼関係は醸成できない。裏切られるとわかっていて信頼するのは、マヌケだけだ。

今のところ、民主党から反省の弁はないし、陰湿な追求を指揮した小沢氏は閣外にいる。次の選挙で民主党は下野して、また同じヤジを飛ばすのがわかっているから、いま、徹底的に叩いておくしかない。自民党がここで譲歩する理由はまったくない。
が……待っているのは両者ともに破滅だ。

どこかで矛を収め、歩み寄る必要がある。当たり前だが、上に立つ方が歩み寄らなければ意味がない。自民党は歩み寄ったが、民主党に裏切られた経験がある。

問題は……この次だ。