ディストピア パンドラの少女 The Girl with All the Gifts

2016年 外国映画 4ツ星 SF SF:新人類 モンスター:ゾンビ 文明崩壊後

「人間」とはなにか?

ゾンビ映画も手垢の付いた題材だが、本作は一味ちがった。説明されずとも、おおよその状況がわかる。メラニー視点で、少しずつ「なにがあったか」「これからどうなるか」が見えていく。テンポがいいし、おもしろい。

「菌類による病気」「ワクチン生成のため少女を犠牲にする」というプロットは「The Last of Us」に通じるが、結末は大きく異なる。メラニーの判断は突飛に思えるが、人間でない彼女に人間を救う義理はない。どのみち人間の世界は終わる。博士の理論は不正確。メラニーは単一の存在ではない。であれば、万物の霊長は人間からハイブリッドに移行していたのだ。
やがて教育を受けたハイブリッドが社会を作り、文化を継承する。彼らが「人間」になるのだ。

もちろんハイブリッドの交配や寿命など、確かめたい点は多い。メラニーが事を急ぐ理由もなかった。しかし私はこれでよかったと思っている。

キリスト教圏では、人間だけが神の子とされる。新人類への嫌悪は日本人が考えるより強いのだろう。『アイ・アム・レジェンド』(2007)の結末が書き換えられたことを思えば、本作はよく仕上げてくれたと思う。

おもしろかった。

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