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[レビュー1979年09月08日に発表された 

エースをねらえ! 劇場版

Aim for the Ace!

突き抜ける喜び

エースをねらえ! あらすじ

ふつうの女子高生 岡ひろみ は、才色兼備の天才プレイヤー・お蝶夫人(竜崎麗香)にあこがれ、テニス部に入部する。気楽に考えていた部活動だが、宗方コーチがひろみを代表選手に抜擢したことで、生活が一変する。宗方コーチの強烈なしごき、部員たちのいじめに悩まされ、ひろみは何度も辞めようとするが、言葉にできない理由で努力を重ね、一流プレイヤーに成長する。

映像センスがいい! 目に見えるものそのままではなく、要素を抽出して、アレンジして、二次元に落とし込んでいる。分割カットによる多角表現も素晴らしい! これがアニメ! これが映画! これが出崎統監督の演出センスか!

なぜ宗方コーチはひろみに肩入れするのか?

ひろみが被害者として苦しむなら、宗方も加害者として苦しんだ。ストレスから解放されるのは緑川蘭子を破ったときではなく、お蝶夫人がひろみをライバルに認めたときだ。あこがれの存在と肩を並べる興奮! 誰よりも自分に厳しいお蝶夫人は、じつは孤独な存在だった。宗方はひろみだけでなく、お蝶夫人の人生も変えた。それがわかったとき、ぐぐっと手に力がこもった。これほど充実感が得られるとは思わなかった。

しかし危うい。ひろみが結果を出さなければ、どうなっていたことか。宗方コーチはひろみを信じた理由を語らない。ひろみが悲壮な決意で尋ねても、いっさい説明しなかった。
理由は最後の最後で明らかになる。ひろみは、不遇のうちに亡くなった宗方の母に似ていたのだ。宗方は母の死を塗り替えるために──自分の手でひろみを幸せにするために鍛えていた。つまり、

テニスの才能なんて関係なかった!

狂気の愛が現実を歪める

宗方コーチは残された時間のすべてを(根拠なく)ひろみに賭けた。その思いが通じたのか、ひろみも(根拠なく)コーチを信じた。根拠がないから、ふたりの絆は固く、奇跡の成長を生んだ。逆に根拠があったら、どこかで挫折したかもしれない。
思えば『巨人の星』の星一徹も、息子・飛雄馬に見込みがあるから育てていたわけじゃない。どんな子であろうと巨人に入団させる決意が先にあって、現実をそこに近づけていった。無茶苦茶だが、だからこそ成功をつかむことができたのかもしれない。

正気にては大業ならず──。

スポ根はスポーツ指南書じゃない

いま、体罰が社会問題になっている。体罰によるスポーツ指導は古い。効果がない。それはそのとおりだ。しかしスポ根は、体罰を肯定するドラマじゃない。狂気の愛を描いたファンタジーなのだ。

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