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[レビュー1997年10月24日に発表された 

ガタカ

Gattaca

「神が曲げたものを誰が直しえよう?」

あらすじ

近未来。人々は、出生前に遺伝子操作を受けた「適正者(valids)」と、自然出産によって生まれた「不適正者(in-valids)」に分類され、厳しい身分差別のある社会で暮らしていた。
不適正者のヴィンセントは、宇宙飛行士になることを夢見ていたが、心臓の欠陥で30歳までに死ぬと予測された彼に、そのチャンスはなかった。希望のない暮らしを送る中、ヴィンセントはDNAブローカーの仲介で、優秀な遺伝子をもつジェロームに成りすます契約を結ぶ。ジェロームは水泳選手だったが、事故で半身不随になり、生活と名誉を守る必要に迫られていた。
ジェロームの遺伝子情報を借りたヴィンセントは、宇宙局「ガタカ」の訓練生になった。過酷なトレーニングに堪え、かつ自分が不適正者であることを悟られぬよう最新の注意を払った結果、ついにヴィンセントは念願のタイタン探査船の宇宙飛行士に抜擢される。
ところが出発まぎわ、ヴィンセントの正体を疑っていた上司が何者かに殺害される。現場でヴィンセントの睫毛が拾われたことで、正体発覚の危機が訪れる。

ストレートに見れば、人間の克己心は遺伝子の制約を打ち破れる。やればできる!と好意的に解釈できる。しかし劇中で語られなかった要素を想像すると、さまざまな見方が成り立つ。

ジェローム(ジュード・ロウ)

「適格者」でありながら成果を残せない苦悩は、どれほど深かったのか? 自身の焼却という結末が示すのは、彼の強さか、弱さか?

アイリーン(ユマ・サーマン)

ヴィンセント(の遺伝子)に魅了されていた彼女に、どんな変化があったのか? ヴィンセントと同じ条件を背負いながら、明暗を分けたのは肉体ではなく意志力だった。そのことを彼女は、どう思っているのか? 彼女は「適格者」を産みたいと思うか?

アントン

「適格者」として産まれ、両親の愛を一身に受けてきた弟アントン。なのに不適格者の兄に2度も敗れたことは、彼にどんな影を刻み込んだのか? それがゆえに、真実を追い求める刑事になったのか?

適格者たち

局長は理想のため、殺人に手を染めた。医師は科学的な根拠もなく、ヴィンセントを見逃した。ともに許されない行為だ。遺伝子が優秀でも、人格が高潔になるわけではないが、それにしても劇中の適格者たちは矮小すぎる。

ヴィンセントも身勝手と言えば身勝手だ。欠陥を隠して宇宙飛行士になれば、重大事故を起こしかねない。もし欠陥がなかったり、あっても事故に直結しないなら、選抜基準がまちがっていたことになる。となれば問題は科学ではなく、政治にある。人間は遺伝子を支配しても、理想郷を作れないようだ。そして冒頭の一節を思い出す。

「自然は人間の挑戦を望んでいる」

ウィラード・ゲイリン

脚本の甘さは目立つが、おもしろかった。

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