回復薬のジレンマ
2005年 娯楽 ゲーム冒険活劇ゲームには、回復薬が登場する。
※魔法や道具の場合もあるが、ここでは一律「回復薬」と呼ぶことにする。
回復薬を、いつ、どのように使うか?
……これに悩んだことはないだろうか?
- 傷を負うたびに使えば、足りなくなる。
- ケチケチしていると、ちょっとした一撃で死んでしまう。
- ステージをクリアすればヒットポイントを全回復できるものの、その手前には手強いボスキャラがいる。
- ゲームは後半になるほど難しくなるから、回復薬はなるべく温存した方がいい。
──つまりこうだ。
死ぬことなくボスを倒せば、回復薬を消費しないで済む。
もし死んでしまったら、コンティニューやロードで再挑戦。何回も繰り返せば、クリティカルが走って、生き残れることがあるだろう。
小さな努力をコツコツ積み重ねて、未来の戦いを支援するのだ。
とまぁ、こんな考えでゲームを進めていく。
そして最終ボス戦がスタート!
最終ボスは……言うことはデカイけど、あんがい弱かったりする。
あっけなく倒れてしまう最終ボス。
ふところには、それまで苦労して温存してきた回復薬がずらーり。
結局、使われないままゲームが終わってしまった!?
どどど、どーしてくれるんだ?
こここ、この回復薬は、どうすればいいの?
ななな、何十時間、何日かけて準備してきたと思ってるんだ?
あああ、あの苦労は……なんのために?
ねぇ、ゲームはこれでオシマイなの?!
◎
こんな話を友だちにすると、唖然とされる。
「なにそれ? なんで使わなかったの?
そこで回復薬を使えば、もっと簡単に突破できたでしょ?
回復薬は、苦労しないために使うモンでしょ?」
……おっしゃるとおり。
回復薬を惜しんで苦労するのは阿呆だ。
血管をぴくぴくさせながらキャラを鍛えても、なんの意味もない。
だがしかし……だがしかし……!
◎
考えてみると、人生にも同じことが言える。
たとえば「貯金」だ。
未来を楽しくするため、貯金することは素晴らしい。
しかし貯金するために過労死したら、なんの意味もない。
ゲームの展開が読めないように、人生の展開も読めない。
しかし未来だけじゃなく、今も楽しまなければ結局ソンなのだ。
だがしかし……だがしかし……!