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[レビュー1998年05月16日に発表された 

D坂の殺人事件

Murder on D Street

「しかし、私は高いですよ」

真田広之の魅力にあふれた1本。その妖艶さは突出しているが、物語はわかりにくい。傾いた構図、極端な陰影、自己主張の激しい効果音など、実相寺監督特有の演出はおもしろいが、キャラクターに没入できないし、「事件」が起こるまでに半分以上の時間を要するため、集中力が途切れてしまった。最初の30分で方向性を示してほしい。

事件が起こっても、犯人がわからない。犯人がわかっても、動機がわからない。贋作を作ると、真作を処分する性癖があったとして、絵のモデルまで殺すのは不自然だろう。明智小五郎も理解できないと言うが、その美しい弟子・小林少年は理解できるという。なぜか? 彼は明智の贋作になろうというのか? 演出意図がわからない。

とにかく説明不足。状況を理解するには、尋常ならざる注意力と想像力、そして愛情を要する。よく言えば文学的、悪く言えば観客を置き去り。「それがいい」と言えるほど傾倒できなかった。

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