エンタメ負債

2005年 娯楽 物欲
エンタメ負債

たとえば、1日7時間ずつ、ビデオ録画していくとしよう。

するとこの人は、1日7時間ずつビデオ鑑賞しないと破綻する計算になる。
1日休んだら、翌週は1日8時間ずつ……
一週間休んだら、翌週は14時間ずつだ。
どんどん増えつづけるビデオは、部屋を圧迫していくだろう。
もう、ヨソ見している場合じゃない。
埋没するまえに、ビデオを消化しなければならない。

ビデオを整理するにも、時間がかかる。
あーだこーだと片づけている時間があったら、さっさと消化した方がいい。
なんせ、どんどん増えていくのだから。

DVDレコーダーを買ったり、棚を強化したり、広い部屋に引っ越すには金がかかる。金を作るためには時間がかかる。
あーだこーだと考えている時間があったら、さっさと消化した方がいい。
なんせ、どんどん増えていくのだから。

こんな生活がつづくと、ビデオ消化もおざなりになる。
せっかく録画したのに、見ずに消去してしまうことがある。
再生したまま、トイレに行って戻ってこないこともある。
もはや「鑑賞」ではなく、「消化」なのだ。

……この図式は、どっかで見たことがある。
そう、借金だ。
借金がかさんで、どうにもならなくなる図によく似ている。

私の友人Eは、この状態を「エンタメ負債」と称した。
より正確には、「エンタメ債務超過」といったところか。
本来なら楽しいはずのエンタメが、まるでツライ作業のようになっている。

友人Eに言わせると、エンタメは金ではなく、時間で買うものらしい。
所持金以上の買い物はできない。
自由になる時間以上のエンタメは買えない。
※買っても、自分のものにはできない。

「忙しいヤツは、パッケージを買っただけで満足してしまう。
 封も切らないまま劣化させる。遊んでも、上っ面を舐める程度でやりこまない。というか、やりこめない。
 そのころは、別の新しいパッケージに目を奪われているから、そのまま中古ショップに売られるか、ゴミ箱に投げ捨てられるだけだ。
 つまり、店頭からゴミ箱へ運ぶために金を払っているようなもんだ。」

──Eの指摘は手厳しい。
これを全面的に受け入れるわけにはいかないが、一抹の真理が含まれているように思う。

※写真はEの家(2000年当時)