[漫画] カムイ伝 / 歴史の力、民衆の力
2007年 娯楽 マンガ 考察白土三平の『カムイ伝』を読んだことがあるかい?
初めて読んだのは、小学校の図書館だった。当時はえぇと、11歳か。そりゃあ、衝撃的だったよ。
はじめは残虐シーンや女性の裸に興奮してたけど、しだいに歴史や社会の無情さに圧倒されていった。個人の努力も信念も関係なく、世の中は大きく、どうしようもなく動いていく。
# これはのちに「唯物史観」と呼ぶことを知った。『カムイ伝』は反体制的な内容なので、日教組の教員がよく図書館に置くんだってさ。
◎
『カムイ伝』は、厳しい身分制度が敷かれていた江戸時代の話。
その最下層(非人)に生まれたカムイは、自身の能力を高めることで、差別から抜け出そうとする。修行を経てカムイは忍者となるが、徳川家の秘密を知ってしまったことで、公儀隠密から追われる身となる(=抜け忍)。
一方、カムイの姉婿にあたる正助は下級農民(下人)だった。
正助は、新しい農法などを導入して、農村全体の暮らしを向上させようとする。その試みは成功するのだが、商人や代官の策謀に追いつめられ、一揆を起こすことになる。幕府に捕縛された正助は……。
『カムイ伝』を読むと、人間の幸せについて考えてしまう。
悲惨な現状を変えようとするのは素晴らしい。だけど誰ひとり幸せになってない。近代的な知性を駆使して巨大資本を築いた夢屋七兵衛でさえ、幸せは得られなかった。
幸せそうに見えるのは、短絡思考の悪人だけだ。
やがてカムイは傍観者になる。
世の中に干渉せず、その変化をただ見つめつづける。
◎
あいにく手元に漫画本はないのだが、いま読み返すとまた違った感動が得られるかもしれないな。