同業他社への転職を制限できるか

2011年 社会 社会
同業他社への転職を制限できるか

 同業他社への転職を制限する就業規則は有効だろうか?

 同業他社に転職して、前職から損害賠償請求?という記事があったので、昔の話を思い出した。

 1996年、私は25歳で、マルチメディアスクールの講師をしていた。前任者が次々に辞めてしまったため、私がコースのカリキュラムをまとめ、教材なども作ることになった。忙しくて、給料も安かったけど、スクールはどんどん売り上げを伸ばしていった。
 そんなある日、社長が同業他社への転職を禁ずる就業規則をもってきた。社長は典型的なワンマンで、反対意見をまったく許さない。退職者がほかのスクールに務めたら、損害賠償すると言うのだ。
 当時、私の会社への忠誠心は篤かったが、それでも新しい就業規則はおかしいと思った。なのでサインしなかった。ところが、同僚の講師N山さんは、

「あんなの、なんの意味もありませんよ。
 意味ないことで争っても意味がない。ぼくはサインしました」

 講師たちで組合を作って抵抗しようと考えていたので、ショックだった。
 でもたしかに、就業規則より転職の自由を保障した憲法が優先される。カリキュラムは企業秘密と言えないだろうし、そもそも考えたのは私だ! とはいえ、サインすればトラブルになるかもしれない。横暴な就業規則を拒否するのは正しいこと。そのときは、そう思っていた。

 ところが半年後、私はいきなり解雇された。前後のドタバタは割愛するが、とにかく私は職を失った。が、ワンマン社長からの圧力があって、同業他社への転職は難しくなった。てなわけで、私はWebデザインの世界に身を投じたのである。
 一方、N山さんも1年後に解雇された。しかしN山さんは、しれっと同業他社のスクールに転職してしまった。訴訟を起こされることもなく、私が作ったカリキュラムで授業したそうだ。

 ワンマン社長の横暴な就業規則に、サインしなかった私が言うことを聞いて、サインしたN山さんが破っている。そして結果的には、N山さんが正しかった。
 意味ないことで争っても意味がない。ワンマン社長に逆らって反感を買っても、なんのメリットもなかった。はいはい首肯して、いざとなれば裏切る。それが正しい処世術だった。

 当時は若かった。
 あるいは今も、あまり要領がよくない私だった。


同業他社に転職して、前職から損害賠償請求?
https://news.mixi.jp/view_news.pl?id=1457281&media_id=116