Amazon倉庫で起こったこと、これから起こること

2013年 政治・経済 Webサービス
Amazon倉庫で起こったこと、これから起こること

 近ごろ、Amazonの倉庫がいろんな意味で注目されている。

 この十年くらいの流れは興味深いので、まとめてみた。効率化によって、人々は仕事を失い、雇用は縮小し、地域経済が破壊されるとしたら、技術はなんのためにあるのか? 根源的な問いを突きつけられているような気がする。

みんながあこがれた効率化

 倉庫の棚から必要なアイテムを取ってくる作業を「ピッキング」と呼ぶ。むかしは熟練した作業員が出納を予測して、台帳片手に運用していたが、アマゾンは早くから電子化。きわめて効率的なシステムを構築することで、スピーディな配送や価格面のアドバンテージを獲得した。
 書籍で成功したアマゾンは、同じシステムでCDやオモチャ、家電、衣類、さらには食品まで扱うようになった。倉庫はどんどん大きくなり、システムは洗練されていった。

 このころ、アマゾンのシステムは羨望の的だった。同様のシステムが普及すれば無駄が減って、社会は豊になると、みんなが思っていた。

効率化が問題視される?

 ピッキングはコンピュータの指示に従うだけの単純作業になった。アイテムがどの棚に収納されていて、どのルートで回収するかは、携帯端末が教えてくれる。倉庫の見取り図さえ覚える必要はない。
 だれでもできる仕事だから、アルバイト(それに準じる正社員)にやらせる。するとモラルの低い作業員が遅刻したり、サボったり、モノを盗むようになる。こうしたロスを防ぐため、細かなルールを決めて、監視カメラを設置し、作業員の現在位置をトレースする。もたもたしていると、「急げ」と警告される。
 作業員のストレスは高まるが、心が折れたらすぐ交代だ。だれでもできる仕事だから、交代要員はいくらでもいる。より安く、より従順な人を使えばいい。どのみち何年働いても、身につくものはないのだから。

なにが問題なのか?

 こうした実情がレポートされると、人々はこぞってアマゾンを批判した。コンピュータに支配されるディストピアを連想させるからだろう。とはいえ、労働法に違反するほど劣悪な環境ではない。アマゾンへの嫉妬心が、バッシングを招いているのかもしれない。

 また、アマゾンの物流センターが、地域の雇用創出に貢献していないことも問題視された。経済規模のわりに、たくさんの人が雇用されるわけでも、高給が支払われるわけでもないからだ。
 そしてアマゾンが地域経済を破壊している事実も見逃せない。アマゾンが躍進すればするほど、地域の商店街はシャッターを閉じることになる。
 アマゾンは消費者のために効率化しているというが、めぐりめぐって消費者の生活を破壊しているのではないか? そんな憤りも漏れはじめた。

 仮にそうだとしても、法律に反しているわけじゃない。アマゾンを批判する合理的な根拠はないのだ。

次の一手

 昨年末、アマゾンは倉庫を縦横無尽に動き回るピッキングロボットをもつ会社を買収した。ロボットはカメラとリアルタム画像処理システムを搭載しており、障害物をよけながら、最短ルートで棚を取ってきてくれる。まるでSF映画のような光景だ。

Warehouse Robots at Work - YouTube

 アマゾンはピッキング作業をどんどんロボットに置き換えていくだろう。使いにくい人間を無理して使う義務はない。それに人間を使わなければ、社会に批判される恐れも減る。

未来はどうなる?

 機械化によって仕事を失うなんて話は、工場だけの話だった。しかし今は、あらゆる業種が効率化によって仕事を失う恐れがある。人間に残された仕事は、機械と機械のあいだをつなぐ単純作業か、クリエイティブな作業だけになるだろう。

 究極的には、システムの所有者だけが儲かるようになるのだろうか? しかし消費者が貧しくなればシステムも共倒れだ。なので消費者に必要最低限の収入を与えることも、システムの一部に組み込まれるかもしれない。まさにディストピアだ。

 日本は人口が減っていくから、効率化は避けられない。こうした流れはますます加速していくだろう。その先になにが待っているのか? とても楽しみである。


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