好きなことを仕事にするな【前編】
2006年 政治・経済 考え事「好きなことを仕事にするな」
むかし、友人Eにそう忠告されたことがある。
友人Eは(この日記にもたびたび登場しているが)、筋金入りのオタクだ。定職に就かず、ひたすら趣味の世界(玩具のコレクション)に没頭している。
彼ほど自分の欲望に忠実な人物を、私はほかに知らない。
◎
──ある日、私は彼に問うた。
「そんなに玩具に詳しいなら、本でも書けばいいのに」
友人Eは答えた。
「趣味を仕事にはしない。絶対に!」
「なんで?」
「仕事は妥協の産物だ。締め切りもあるし、付き合いもある。
趣味を仕事にすると、純粋さが失われる。
好きなことを好きでいるために、好きなことから自由でいたい。
だから趣味を仕事にしない!」
どうしてそう考えるようになったのか知らないが、強い意志が感じられた。
しかし私は納得できなかった。
なぜ、趣味(=好きなこと)を仕事にしてはいけないのか?
◎
友人Eにとって、仕事は「手段」だった。
(趣味につぎ込む)金を得るための手段であり、それ以上の意味はない。夢も希望も抱かないから、イヤなことでも堪えられる。イヤなことに堪えるから、金をもらえるのだ。
仕事をしている時間、友人Eは死んでいるのも同然だ。
仕事を終え、家に帰ってくると生き返る。
趣味に没頭しているときだけが、本当に生きている時間というわけだ。
◎
友人Eは趣味と仕事を完全に切り分けている。
その方が趣味の喜びを享受できるし、仕事に惑わされることもない。
そうかもしれない。
そうでないかもしれない。