世界遺産について考える

2008年 社会 旅行 芸術
世界遺産について考える

平泉の世界遺産登録が落選した。日本推薦では初めてのことらしい。

興味がわいたので調べてみた。
世界遺産の登録件数は、2007年時点で851件。多くなりすぎたので、新規登録は抑制される見通しだ。しかし世界遺産に明確な上限はない。数が増えると「ありがたみ」が減るのだろうか?

世界遺産の条件は「顕著で普遍的な価値」があること。しかし内訳を見てみると、ヨーロッパの登録が突出している一方で、1件の登録もない国が44もある。これは自然や遺産が偏っているのではなく、それを見る人間の分布が偏っているためだろう

ユネスコの活動を批判するつもりはない。人間が選定している以上、偏るのは仕方がないし、世界遺産の登録が観光ビジネスに直結していることもやむを得ない。遺産の保護には金がかかる。その金を捻出するには、観光地にするのが手っ取り早い。政府も予算を組みやすくなる。
まぁ、保護より観光が目的かもしれないが、このへんの切り分けは不可能だ。

私も国内の世界遺産をいくつか見てきた。やはり世界遺産に登録されると、交通は整備され、宿は充実し、関連書籍も増えるようだ。その一方で、観光によって遺産が傷むとか、在りし日の風情が失われるといった指摘もあるが、そこは目をつむるしかない。観光地として整備されていなければ、研究者でも冒険家でもない私たちが気軽に訪れることはできなかっただろうから

『薔薇はその名で呼ばれずとも、よい香りがする』

世界遺産に登録されることで、本質が変わるわけじゃない。変わるのはそれを見る人間の目だ。世界遺産を否定することはないが、振り回されることもないだろう。

てなわけで、最近はあまり有名でないところを見ようと思っているのだが、有名でないところは情報が少なく、とても観光しづらい。だからこそ旅する価値があるんだけど、なかなか割り切れない。

日本政府の暫定リスト9件

  • 古都鎌倉の寺院・神社ほか
    Temples, Shrines and other structures of Ancient Kamakura
  • 彦根城
    Hikone-Jo (castle)
  • 平泉 - 浄土思想を基調とする文化的景観
    Historic Monuments and Sites of Hiraizumi
  • 富岡製糸場と絹産業遺産群
    The Tomioka Silk Mill and Related Industrial Heritage
  • 長崎の教会群とキリスト教関連遺産
    Churches and Christian Sites in Nagasaki
  • 飛鳥・藤原の宮都とその関連資産群
    Asuka-Fujiwara: Archaeological sites of Japan's Ancient Capitals and Related Properties
  • 富士山
    Fujisan
  • 国立西洋美術館本館
    Main Building of the National Museum of Western Art
  • 小笠原諸島
    Ogasawara Islands