いい上司、悪い上司

2008年 政治・経済 仕事
いい上司、悪い上司

知り合いの女性が、部下の教育に悩んでいた。

彼女はずっと、わがままな上司の下で働いてきた。
「わがまま」といっても悪い意味ではない。私も彼女の上司を知っているが、まぁ、自分本位で、こうと決めたら人の話を聞かず、そのくせ気まぐれに変更するような人物だった。
そんな上司に振り回されながら、彼女は仕事を覚え、今は昇進して管理職に就いている。

彼女にも部下ができたので、よい上司になろうとした。
つまり、部下の自由意志を尊重する上司だ。決して命令しない。命令すると、あとあとの変更が面倒なので、ハッキリ言わない。なんでも部下に決めさせようとした。

しかし部下は、上司からの命令を待っている。
部下には「自分はこうなりたい」「こんな仕事にしたい」というビジョンがないため、なにも決められない。そのため取引先や業務委託先に方針を決めてもらっているが、それでうまくいくはずもなかった。

話を聞いて、私は肩をすくめた。解決策は明らかだ。
「自分もわがままな上司になればいいじゃない」
わがままな上司に振り回されたことで、彼女は成長したのだ。物事が二転三転しないよう、自分のビジョンを持ち、自分で考えるようになった。自由にやれと言われて、誰が創意工夫するだろう?
つまり、「芸術は拘束より生れ、闘争に生き、自由に死ぬ」というヤツだ。

彼女は言葉を失った。しかしまだ納得できない。
「それでも私は命令したくない。
 どうしてもしなくちゃいけない命令はするけど...」
「どうしてもしなくちゃいけない命令ってのは、会社の指示でしょ?
 それは命令じゃなくて、通達じゃない」
といった議論が2時間ほどつづいた。

山から水が流れてきて、里の田畑を潤すとしよう。
このとき、水の流れに手を加えるのが上司だ。上司が有能なら、里の者(部下)には恩恵がもたらされる。逆に上司が馬鹿なら、水が涸れたり、淀んだりする。いずれにせよ、上司はなにかをするべきだ。なにもしないことが最善なら、そこに上司はいらないのだから。


# 写真は「セブン上司」。
# 上司と言えば彼なのだが、知ってる人は少ないかなぁ。