セカンド・オピニオン・サービス?
2008年 社会 健康 医療
「保険は利きませんけど、質の高いクラウンを入れませんか?」
1996年(平成8)のこと、通っていた歯医者にそう提案された。
クラウンとは歯の補綴物、つまり銀歯や金歯のことだ。通常のクラウンは耐久力がなく、ぽろっと外れたり、ゆがんで虫歯の原因になってしまう。特殊な材質のクラウンなら心配ないが、保険対象外なので高額になる。お値段、10万円だってさ。
私は悩んだ。歯の痛みも忘れるほどに悩んだ。どれほど深く悩み抜いたかは、お察しいただきたい。
(歯の治療にそこまで金を掛けてよいのか?
それ以前に、この歯医者は真実を語っているのか?
金儲けのために、余計な提案しているのではないか?)
だが歯は大切だ。それは揺るがしがたい事実。
私は10万を支払って、グレードの高い治療を受けた。当時の私にとって10万がどれほど高額だったかは、お察しいただきたい。
それは、ふたたび拷問を受けるか、10万払うかの選択だった。
◎
ところが10年後、同じ歯が虫歯になってしまった。
前回より強烈な拷問を耐えぬき、新しいクラウンをつけてもらう。技術が進歩したのか、状況がちがうのか、グレードの高いクラウンの話は出なかった。そして現在、なんの問題もない。そこで私は考える──。
- あの歯医者はウソをついた。私はだまされた。
- あの歯医者はホントを述べたが、私のケアが足りなかった。
真実はわからない。考えたくもない。
ただ思うのは、生きていれば今後も同じような選択を迫られることがあるだろう。自分にとって致命的な問題解決を、専門家にゆだねる。しかしギリギリのところで専門家を信じ切れない。セカンド・オピニオンを聞きたくなる。セカンド・オピニオンを求めれば、さらに多くの費用がかかるが、よりよい決断のためには必要かもしれない。
◎
テレビを見ていたら、保険会社が「セカンド・オピニオン・サービス」を提供していた。
主治医Aの意見が不安になったら、もう1人の医者Bを紹介してくれるというのだ。セカンド・オピニオンは「診療」ではなく「相談」になるため、健康保険給付の対象外である(全額自己負担)。それが生命保険のサービスに組み込まれていれば、なるほど安心だし、オトクだ!
......マジカ?