痛みのトラウマ

2015年 生活 健康 医療
痛みのトラウマ

「痛かったら合図くださいね」

 と歯医者は言うが、そんな余裕はない。「痛い」と感じた瞬間、ビクッと身体が跳ねてしまうからだ。痛みが小さくても、あるいは痛くなくても、「痛みが来る」と予感しただけで反射してしまう。
 治療中に身体が動くのは危ないから、全身の筋肉を緊張させる。反射を抑えこもうとする。
 すると歯医者が不安になる。

「痛いですか?
 痛むはずないんですが......」

 痛いわけじゃない。痛みに堪えているわけでもない。痛みの予感に震えているわけだが、口にドリルを突っ込まれた状況では説明できない。

「らいりょううえう(大丈夫です)」

 と答える。しかし治療を再開すると、私は拷問を受けているような反応を示す。

「トラウマとか、ありますか?」

 と聞かれ、ぎょっとなった。

「ありません。
 ただ、過去に経験した痛みの予感で緊張するのは、トラウマですか?」

「......ですね」

 これが、トラウマというやつか。

 夜、友人たちとSkypeで話すことになり、歯医者の痛みについて問うてみたが、みな、そこまで強い反応は示さないそうだ。このときはじめて、自分に「痛み恐怖症」があることを自覚した。

 痛みに堪えられないわけじゃない。
 痛みに敏感なわけでもない。
 「痛みに堪える」という判断ができないのだ。

 反射だから、本当にどうしようもない。

 理性じゃないから、痛みのない治療がつづいても改善しない。神経を抜いた歯や、被せ物を削っているときでさえ、痛みの予感にふるえてしまう。このまま悪化すると、麻酔しても緊張が解けなくなるかもしれない。

 困ったものだ。

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