口座の名寄せ / 自分が自分であることの証明

2010年 生活 社会
口座の名寄せ / 自分が自分であることの証明

「すでに郵便局の通帳をお持ちではありませんか?」

 郵便局で口座を開設しようとしたら、そう尋ねられた。「ありません」と即答したものの、自信がなくなって「と思います」と語尾を濁す。
(うーん、子どものころ、郵便局の通帳をもっていたような気がしないでもない。お年玉を預金したのは、○×銀行だったっけ?)
 まごついてると、局員が調べてくれた。キーを叩く回数から、私の名前と免許証のナンバーで照合するようだ。その結果、
「通帳があるかもしれません」とあいまいな返事。
 その場は引き上げて、実家の母親に電話してみた。すると、
「通帳? ない……はず」とあいまいな返事。
 まぁ、私が郵便局の通帳をもっていたとすれば、それは30年近く前のこと。通帳があれば「ある」と断言できるが、通帳がない(見あたらない)から「ない」とは断言しづらい。全国の通帳を調べて、私の名前がなければ「ない」と言えるのだが……。

 あれ? なぜ局員は「ある」と断言できなかったのか?
 おそらく同姓同名の口座が見つかったのだ。同姓同名のソイツは、免許証のナンバーを登録していないのだろう。だから局員は、私の免許証と「合致する」とも「合致しない」とも言えなかったのだ。
 ソイツの住所がわかれば、私でないことがハッキリするけど、個人情報にあたるから言えない。ならば、「千葉市で作られた通帳でなければ、私ではありません」と言えばいいのか。
 と気づいたのは夜だったので、面倒になった。嫁が口座を作ったので、もういいや。

 郵便貯金の口座は人口の5倍以上もあった。今は名寄せを進めているから、そこそこ減ったと思うが、まだ口座と利用者の数は合致してないだろう。日本には社会保障番号にあたるものがないから、名寄せは大変だ。住所や名前が変わった人の同一性を確認しつつ、不正利用を防がなければならない。悪意のある人が名寄せすれば、口座の金をそっくり持っていかれてしまうのだから。

 ん? もし郵便局で見つかった口座が同姓同名の他人ではなく、自分のものだったら? 私も母親も忘れているが、じつは私の口座があって、お金が残っていたら? きちんと名寄せして、免許証のナンバーを付加した方がいいかもしれない。

 あーうー、面倒な話だなぁ。

※写真は日本橋にある「郵便発祥の地」のプレート