ナチュラルフードジャンキー

2012年 食べる 食べる
ナチュラルフードジャンキー

あぁ、あのタケノコを食べたい。

吉川出張で手に入れたタケノコがべらぼうにうまかった。煮物、天ぷら、炒め物、シナチク……。どれも絶品だった。7本あったから、余って傷めたり、飽きてしまうことを心配していたが、まったく杞憂だった。それほど、うまった。

あのタケノコを食べ尽くして早一ヶ月。当初は感じなかったが、じわじわ禁断症状が出ている。スーパーでタケノコの水煮を買っても、まったく満たされない。こんなの、タケノコじゃない。いや、これがタケノコというなら、それでいい。私は、あのタケノコを食べたい。

吉川の人々にとって、タケノコは珍しくない植物の1つ。それも厄介者だ。
たとえば、道ばたにタケノコが顔を出したとする。放っておくと、ぐんぐん伸びて、雪が積もって大きくしなると、とても危険になる。また地下茎で増えて(広がって)いくから、道がふさがってしまう恐れもある。なので吉川の人々は、タケノコを見かけたら蹴って折るそうだ。折れたタケノコは、そのまま自然に帰す。食べるのは、その一部だ。

あのタケノコをもう一度食べられるなら、新潟へ行ってもいい。しかし私は取材に同行しただけの身だから、「タケノコください」とねだるのは無理だ。また、農家が管理する山林に勝手に入るわけにもいかない。
吉川の山はタケノコだけでなく、山菜の宝庫だった。とりわけゼンマイがうまかった。農家も山菜を独占したいわけではないが、町の人が山に入るとひどく荒らしてしまうので、立入禁止にせざるを得ないそうだ。
余談だが、立入禁止の立て札があると、分別をわきまえて(農家にとって許容できる)人は遠慮するが、日本語が読めず、注意しても言葉が通じない阿呆には効果がないため、困っているんだって。

話を戻そう。
どうやったら、あのタケノコを食べられるのか? 吉川で泊まった宿では、食事に山菜が出なかった。山菜は日常食だから、客をもてなす料理とみなされないようだ。そうじゃないよ! 山菜を出している民宿もあるにはあるが、本当においしいかわからないのに、山菜のために出かけるのはリスクが大きい。ううーん。

食べられないとなると、ますます欲しくなる。
困った。
天然食品で中毒になるとは思わなかった。