レビュー  2010年08月23日  に発表された 

妖しき文豪怪談 (全4回)
KAIDAN - HORROR CLASSICS

3ツ星

混ぜるな、危険

NHKで放送されたテレビ番組。文豪たちの短編小説を映像化したドラマパートと、そのメイキングや文豪の生涯をたどるドキュメンタリーパートで構成されている。どれも青空文庫で読める作品だが、古典は読みにくいため、こうして映像化されるのは大歓迎だ。しかし原作に忠実なものと、大幅なアレンジを加えたものを混ぜているのは好ましくない。原作どおりの映像化には無理があるから、『青い文学』シリーズ(2009)のように、すべて再解釈を加えるべきだと思う。ドラマを見て原作を読んだつもりにさせず、どのくらいちがうか興味を抱かせるような構成の方が魅力的だと私は思う。
あるいは、どのくらいアレンジを許容するか、番組としての方向性が決まっていなかったのかもしれない。

片腕 The Arm

原作:川端康成「片腕」
監督:落合正幸(パラサイト・イヴ)
放送:2010-08-23

女性の部分を愛する気持ちはわかる(つもり)だが、擬人化するのは共感できない。腕がしゃべっているように見えてはならない。なぜなら部分を介して女性の全体を妄想しているのだから。私のフェティシズムがずれているのだろうか?
腕の表現はよかった。これは原作に忠実ではなく、もっと監督がイマジネーションをふくらませて、自分なりの世界観で再構築してほしかった。

葉桜と魔笛 The Whistler

原作:太宰治「葉桜と魔笛」
監督:塚本晋也(『鉄男』『双生児-GEMINI-』『六月の蛇』『悪夢探偵』)
放送:2010-08-24

なんて美しい物語だろう。神さまが在ると考えるより、姉妹の心が完全一致したことの方が奇跡に思える。おもしろかった。
興味がわいたので、原作を読んでみた。比べると、姉さんの失恋パートは不要だったと思う。また妹への嫉妬心も原作ほど鮮烈ではない。だからといってドラマが駄目だったというわけじゃない。ドラマを見なければ、原作を読むこともなかったし、ドラマの映像イメージでだいぶ読みやすくなったのだから。

(追記)でも納得できなかったので、自分なりに翻案してみた。

鼻 The Nose

原作:芥川龍之介「鼻」
監督:李 相日[リ・サンイル](『青〜chong〜』『フラガール』)
放送:2010-08-25

本作を芥川龍之介の「鼻」として紹介するのはよくないと思う。後日談であることより、和尚の自尊心というテーマから逸脱しているから。しかし作品としてはおもしろい。監督の個性がにじみ出ている。共感できないが、この挑戦は評価したい。

(追記)でも納得できなかったので、自分なりに翻案してみた。

後の日 The Days After

室生犀星「童子」「後の日の童子」
監督:是枝裕和(『誰も知らない』)
放送:2010-08-26

これまた難しい。やはり原作に忠実であろうとするところが、イメージの広がりを抑制していると思う。どっちが亡霊なのか、死者に囚われた生者は「生きている」と言えるのか。そのあたりを掘り下げるとおもしろくなったと思う。


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