1925年の明智小五郎 (全3話) / シリーズ・江戸川乱歩短編集 #01 The Early Cases of Akechi Kogoro, 1925

2016年 日本ドラマ 4ツ星 主人公は犯罪者 倒叙 探偵 推理 文学・古典・童話 @NHK @江戸川乱歩

おもしろい試み。

NHKによる江戸川乱歩の短編小説のドラマ化。第一弾に選ばれたのは乱歩の初期作品3つ。

原作をなるべく変えず、地の文を読みながら芝居を進めていく。近ごろのドラマはナレーションがいないから、だれのモノローグかわからず混乱した。朗読が主体だから、会話による状況説明に注力しない。そのためセットや衣装も作り込んでいないが、いっぽうで人形劇や中傷演出で、おもしろみを加えている。

明智小五郎を女優の満島ひかりが演じている。作品世界では男性として扱われているが、明智ひかりは女性的にふるまう。そのギャップがまたおもしろかった。

言葉で説明するのは難しいが、とてもよい試みだった。解説パートもほしいところ。

D坂の殺人事件

シリーズ・江戸川乱歩短編集「D坂の殺人事件」

[あらすじ] D坂の大通りにある古本屋で殺人事件が起こり、私と明智小五郎が第一発見者となる。警察の捜査は行き詰まる。探偵趣味がある「私」は、明智小五郎が犯人ではないかと推理する。

[感想] 事件の要点をわかりやすく説明している。原作に忠実すぎて、説明が足りないかもしれない。

心理試験

シリーズ・江戸川乱歩短編集「心理試験」

[あらすじ] 貧しい学生・蕗屋清一郎は、老婆を殺害して大金を盗んだ。笠森判事が担当になり、心理試験を行っていると言う。蕗屋も心理試験を受けるが、練習によって完璧にこなした。その結果を不審に思った名探偵・明智小五郎は蕗屋に罠を仕掛ける。

[感想] 心理試験のヘッドギアが秀逸。リアリティよりインパクト重視。明智ひかりの言動が転がったり、足を組んだり、巻き付いてくる。不自然さが楽しい。

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屋根裏の散歩者

シリーズ・江戸川乱歩短編集「屋根裏の散歩者」

[あらすじ] 郷田はなにをしても楽しめない男。あれこれ試したがうまく行かず、ついに殺人に手を出してしまう。

[感想] 明智ひかりが郷田に殺人の話をするとき、下宿の窓に鮮血が飛び散る。抽象表現だが、こういうの好き。郷田三郎を演じた男は、柔道家だった。だから身体が大きく、演技らしい演技をしなかったのか。小柄な明智ひかりのおもちゃにされるシーンは愉快だった。

この3作品は映像化された回数も多いが、原作要素をここまで残した映像化ははじめてだろう。いやぁ、うれしい。明智ひかりの活躍をもっと見てみたい。

ゆっくり文庫版


屋根裏の散歩者
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