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[レビュー1973年10月07日に発表された 

刑事コロンボ (#19) 別れのワイン

Columbo: Any Old Port an a Storm

「刑務所は結婚より自由かもしれませんな」

あらすじ

ワイン醸造会社経営者のエイドリアンは、ワインに生涯を捧げてきた。しかし工場の権利を持つ弟リックが、エイドリアンが軽蔑する大手酒造会社に工場を売却すると言い出す。カッとなったエイドリアンはリックを殴打。リックはまだ死んでいなかったが、エイドリアンは弟を縛り上げ、ワイナリーに閉じ込め、空調を切った。やがてリックは窒息死するが、そのときエイドリアンはニューヨーク出張でアリバイが成立する。帰ってきたエイドリアンは、リックの死体に潜水服を着せ、海に投げ捨てた。リックの死体が見つかると、ダイビング中に頭を強打して昏倒。そのまま窒息したと思われた。

コロンボはいくつか不自然な点を見つける。リックの車は放置されていたはずなのに、だれも見ておらず、雨に濡れた形跡もない。リックの胃袋は空っぽ。二日ほど断食してからダイビングしたのは不自然だ。もっとも疑わしいのは兄エイドリアン。コロンボはワイナリーに注目するが、証拠は見つからない。また秘書のカレンが、リックが工場を出ていくところを目撃したと証言したことで、手詰まりになる。

初見では殴られたリックが死んでなかったことに気づかず、死亡推定時刻がズレた理由がわからなかった。冷静に考えると、まだ生きている弟を縛り上げ、ワイナリーで窒息させるって、恐ろしい手口だな。リックが暴れてワインの棚を崩す恐れもあった。扉を開けた犯人が高温に気づかないわけがない。いろいろ不自然な点もあるが、そこは重要じゃない。

コロンボは証拠を見つけられず、「自白していただけますか?」とたのんでいる。シリーズで唯一のことだ。犯人の共感を得るため、ワインを猛勉強したわけだが、そのルートをいつ思いついたのか。コロンボの内面が見えると面白そうだが、倒叙形式と両立しないか。

エイドリアンはワインに生涯を捧げてきた。そのため弟を殺したのに、秘蔵のワインを失ってしまった。その事実に気づいたのはコロンボだけ。なんという皮肉。ラストの会話は印象的だ。

「よく勉強されましたな」
「ありがとう。なによりも嬉しいお褒めの言葉です」

嫌味も怨みもない、心からの賛辞。あのワインを飲むためなら、殺人を犯す価値もあるかもしれない。

それから秘書が怖かったね。12年勤務と口止めの対価として、結婚を迫る。カネもほしいが、情欲もありそう。エイドリアンも、立場が上のときは名前で呼ぶようにと言うが、脅迫されると拒絶する。生々しい。
犯人は趣味の人だ。自分を曲げることができなかった。いまさら秘書の奴隷になれるはずもない。迎合より殺人を、結婚より刑務所を選ぶ。まるっきりの駄目人間なんだけど、清々しかった。

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