まぼろしのアンサンブル
2008年 生活 日常2年前の夏、光が丘公園でフルートを吹くおじいさんを見かけた。
陸橋の木陰で、ちゃんと譜面台も置いている。台には、『求む、オーボエとヴァイオリン』という貼り紙が掛かっていた。3人集めてアンサンブルにしたいのだろう。公園で演奏する人は多いが、真夏であり、年配者で、仲間募集の貼り紙が印象的だった。
おじいさんはいつも、同じ場所で演奏していた。
毎日来ているとは思わないが、私が公園を抜けるたびに見かけるので、すっかり「定番キャラ」になっていた。暑いのにタフだなぁと感心する。あいにく私は楽器を弾けないので、ただ通り過ぎるだけだった。
秋になると、おじいさんはいなくなった。
冬になり、春になり、夏になっても姿を見せない。さらに季節はめぐり、今年の夏もフルート演奏を聴くことはなかった。
猛暑だったから、野外演奏はやめたのだろうか?
それとも仲間が見つかって、場所を変えたのだろうか?
今でも公園を通り抜けるときは、おじいさんの立っていた場所を見てしまう。
どこかでアンサンブルを奏でているのだろうか...。