奇妙な親子

2011年 生活 日常
奇妙な親子

中華料理屋で、奇妙な親子を見かけた。

となりのテーブルに座った父と母、息子の3人が、3人とも携帯端末を使っていたのだ。父と母はスマートフォン、息子は携帯ゲーム機をいじっている。やや暗めの店内で、3人の顔が照らし出される。3人ともしゃべらない。

(どういう家族なんだろう?)

平日の夕方、高田馬場である。隠れた名店で、ただ腹を満たすところじゃない。
(家族で美味しいものを食べに来たのに、なんで会話しないのだろう?
 よく見てなかったけど、注文するときはどうだった?
 ここの餃子はうまいぞ~、とか言ったのかな?)

私は元カメラマンの友人と飲んでいたのだが、二人とも気になってしまい、ちらちら見てしまう。こっそり写真も撮ってみたが、3人の目を見る勇気はなかった。

料理が運ばれてくると、3人とも携帯端末をしまって、食べはじめた。もくもく食べている。私の背後なので、友人に見てもらう。

(会話してる?)
(……わかりません)
(醤油とってレベルは?)
(……あるような……ないような)

食事が終わると、3人は出て行った。早い。食後の滞在時間が短すぎる。

姿が見えなくなると、私たちは止めていた呼吸を再開するようにしゃべりはじめた。
でも、ちょっと待って。私たちは彼らが来る前から飲んでいて、去った後も飲んでいる。食べるより、話している時間の方が長い。でも、ここは、そういう店だよね? だよね?

にぎやかな店内で見かけた、奇妙な親子だった。