ミラーレスの最新モデルがすぐ値崩れする理由

2013年 科技 カメラ
ミラーレスの最新モデルがすぐ値崩れする理由

 ミラーレスカメラの最新モデルは、値崩れがひどいらしい。

 発売当初は6万とかしても、すぐ4万、3万と下がっていき、2万円を切ったところで一気にはけるそうだ。つまり実質的に2万円の価値しかない商品が、ぼったくり価格で売られているわけだ。しかし多くの消費者はわかっているから、最新モデルに飛びつかない。するとますます値下げ圧力は高まる。
 メーカーにとってもよくない傾向のはずだが、なぜつづくのか、私なりに理由を考えてみた。

モノの価値と価格

 価値(value)は自分で決めるもの、価格(price)は市場が決めるもので、両者は一致しない。モノを買うときの判断は単純で、自分にとっての価値と価格を比較するだけ。
 たとえば1万円のカメラがあったとして、自分にとって1万円以上の価値があれば買うし、2,000円くらいの価値しかなければ買わない。

 価値 ≧ 価格 → 買う
 価値 < 価格 → 買わない

 しかし価値は定量的に比較できない。また気分や状況に大きく影響される。
 たとえば、コップ一杯の水が800円なら買わないが、砂漠をさまよったあとなら(自分にとっての価値が高まるから)買うだろう。コーラ1本20円は安いけど、炭酸に飽きていたら(自分にとっての価値が下がるため)買わない。
 買い物の判断が難しい理由の1つは、自分にとって価値が揺らぎやすいからだ。

自分の満足が周囲に流される

 きのう1万円で買ったカメラが、今日8,000円に値下げされていれば、たいていの人は「損した」と感じる。しかし手元にあるカメラの価値は変わっていない。中古転売するつもりがないなら、ほかの人がいくらで買ったかは関係ないはず。

 価値は自分で決めるものだが、やはり周囲に影響されてしまう。価格が高いと貴重に、安いと粗雑に見える。もちろん市場が決める価格には強い説得力があるが、安易に流されるのも情けない。
 それは自分にとっての価値を、ほかの人に決めてもらっていることになる。

カメラの価値は?

 高いカメラを所有することが喜びの人は、価格と価値が一致している。
 珍しいカメラを蒐集している人は、希少性と価値が一致する。
 写真で稼いでいる人は、稼いだ金額以下の出費なら問題ない。

 しかし趣味でカメラをやっている人は、自分がどこに喜びを見いだしているか、買った機材で満足が得られたか、真剣に考えなければならない。なぜなら、本人以外は検証できないからだ。
 高いカメラで撮った写真に満足できなければ、買い物の判断がまちがっていたことになる。なぜまちがえたのか、どうすればよかったか考えないと、同じ失敗を繰り返す。

最新モデルが値崩れする理由

 最新モデルの価格は、実質の価値と釣り合っていない。そのため値崩れするわけだが、こんなことを繰り返せば価格の信用が揺らぎ、メーカーも困るはず。それでも同じことを繰り返すのは、高くても最新モデルに飛びつくバカが多いからだろう。

 自分にとっての価値を考えない人は、周囲の評価に依存するため、簡単に釣れる。また考えてないから、何度でも釣れる。商品開発するより宣伝する方が売れるとしたら、悲しい話だ。
 ミラーレスはとりわけ値崩れがひどいらしい。つまりミラーレスを買う人は、コンデジを買う人ほど価格を気にせず、一眼レフを買う人ほど価値を気にしない。だから価値と価格のズレが横行してしまうわけだ。
 ミラーレスを買う人もちゃんと考えてほしいけど、逆に言えば、メーカーは「ちゃんと考えない人に最適なカメラ」として、ミラーレスという市場を開拓したのかもしれない。

 以上が私の所見である──。
 カメラだけじゃなく、家電や装飾品、映画、ゲーム、アイドル、車などにも当てはまるかもしれない。私はより少ない出費で、より大きな満足を得たいから、真剣に考えたい。考えることが1つの趣味とも言える。