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[創作] 2011年09月28日(水)に書いた妄想リメイク

[妄想] 零 ~刺青ノ聲~

[妄想] 零 ~刺青ノ聲~

目覚めても悪夢──

まえがき

 『零 -刺青ノ聲-』は、2005年に発売されたPS2のゲーム。零シリーズの3作目で、キャッチコピーは"侵食する恐怖"。前2作を気に入っていた私は大いに期待したのだが、内容は今ひとつだった。主人公・黒澤玲に感情移入できなかった。
 そこで、自分が期待したストーリーをまとめてみた。基本的なプロットは踏襲しつつ、独自の解釈を加えてある。ゲームをプレイした人なら、シーンのイメージが湧くだろう。


序章

バイパスの事故

 黒澤レイ麻生優雨との結婚を控え、おだやかで幸福な日々を過ごしていた。
 ある雨の夜、山道を運転中にハンドル操作を誤り、事故を起こしてしまう。レイは軽傷で済んだが、同乗していた優雨は頭を強打し、そのまま昏睡状態になってしまう。身体に異常はないのに、なぜか目覚めない。

 優雨の家族はレイを責めなかった。
「優雨はもともと身体が弱かったから、仕方ないの。レイさん、自分を責めないで。あなたはあなたの、新しい人生を歩みなさい」
 その優しさは嬉しくもあり、つらくもあった。籍を入れていなかったことが悔やまれる。なにもかも悔やまれる。なにもかも。
(優雨、あなたをどれほど愛していたか、私はまだ伝えていないのに。これは夢よ。早く醒めて......)

零 -刺青ノ聲-
(c) tecmo,ltd 2005

夢屋敷へ

久世屋敷 / 現在

 1年が経ち、レイは仕事に復帰していた。ふさぎ込むレイを励ましてくれたのは、住み込みアシスタントの雛咲深紅だった。
 ある日、レイは久世屋敷の撮影を依頼される。そこは1年前に事故を起こしたバイパスの真下にあった。撮影中、レイは優雨の幻が見る。追いかけると、あたりは急に暗く、寒くなった。不気味な影に襲われかけたところで、
「大丈夫ですか? レイさん」
 我に返った。深紅が心配そうな顔をしている。「大丈夫」と答えながらも、動揺は隠しきれない。
(あれは幻? まさか優雨の生き霊が歩いていたとでも? そんなまさか。でも夢でも幻でもいい。優雨に会いたい......)

零 -刺青ノ聲-
(c) tecmo,ltd 2005

久世屋敷 / レイの夢

 その夜、レイは不思議な夢を見た。久世屋敷にいるのだが、どこも崩れていない。まるで過去を見ているようだ。漆黒の闇に雪が舞っている。星も月も見えない。永遠の夜に閉ざされているみたい。
 ふたたび優雨の幻を追って、奧へ、奧へ。屋敷は幽霊の巣窟だったが、射影機によって撃退できた。射影機をくれたのは優雨だろうか。

零 -刺青ノ聲-
(c) tecmo,ltd 2005

久世屋敷 / 夢に囚われし者

「私のせいじゃない。私のせいじゃない」
 部屋の片隅で怯える女性と遭遇する。彼女──滝川吉乃は正気を失いつつあった。わけのわからないことを喚き、レイを困惑させる。
「ねぇ、お願い。眠っている私を起こして」

 その時、場の空気が凍り付いた。闇の奧から刺青の女が現れた。ぐんぐん近づいてくる。吉乃は恐慌状態になって逃げだした。レイも駆け出すが、刺青の女に追いつかれてしまう。
 目覚めると、自分の部屋だった。肩に激痛が走り、刺青が浮かび上がる。すぐに消えたが、あれが夢だったとは思えない。

零 -刺青ノ聲-
(c) tecmo,ltd 2005

病院 / 夢に囚われし者の末路

 調べてみると、滝川吉乃は実在した。1年前、飛行機事故から奇跡の生還を果たした女性だった。新聞で見たことがある。一時期は世間の脚光を浴びたが、自分だけ生き残った自責の念から精神を病み、眠りつづける奇病に罹っているという。
 入院先は優雨と同じ病院だった。病室を訪れると、確かに夢の中で出会った女性だった。声をかけようと手を触れると、それが合図であったかのように吉乃の全身に刺青が浮かび上がり、激しい痙攣の末、煤(すす)になって消えてしまった。

 怖くなったレイは病室から逃げ出した。
(いつか私も煤になってしまうのかしら?)
 恐怖とともに、かすかな期待が芽生える。
(そうすれば、優雨に逢える?)
 立ち止まったレイは探索を決意した。

零 -刺青ノ聲-
(c) tecmo,ltd 2005

さらに奥へ

黒澤邸 / 螢からの手紙

「また螢さんから手紙が来ました」
 天倉螢、麻生優雨、そして深紅の兄である雛咲真冬の3人は、同じ大学で民俗学を学んだ親友同士。卒業後、螢はノンフィクション作家となって、全国を旅しながら民間伝承を調査している。レイはまだ螢に会ったことがない。また螢も優雨の事故を知らないのか、優雨に調査レポートを送りつづけいた。
 思うところがあって、レイは手紙を開封する。そこに記された「眠りの家」伝承は、まさに自分が直面している問題だった。

零 -刺青ノ聲-
(c) tecmo,ltd 2005

レポート / 久世集落の消失

 久世家が統治する久世集落は、山奥にありながらとても豊かだった。人々は久世家が秘術を用いて異界から福を招いているとうわさした。あの増改築を繰り返した異様な屋敷にも、呪術的な意味があったのかもしれない。
 ところが明治初期、久世集落は疫病で全滅してしまう。疫病というのはゴマカシで、実際は死体さえ見つからない集団失踪だった。神隠しと言うべきか。どこの家にも争った形式はなく、ただ大量の煤が見つかったという。

レポート / 「眠りの家」伝承

 久世家の秘術を探るため、呪術師や学者が久世屋敷に移り住んだが、みな失踪するか発狂してしまった。やがて近隣の村からも失踪者が出て、恐怖が蔓延した。
《久世屋敷は夢に沈んでいる。死者に未練を残す者は、「眠りの家」に招かれる。そこで刺青の女に触れられると、夢に侵食され、やがて目覚めなくなり、終には煤となって消えてしまう......》
 「眠りの家」は久世屋敷とはかぎらず、その人や愛する人に縁のある場所が夢に出てくるそうだ。恐れた人々は遠くに移り住み、久世屋敷への道を閉ざした。そして戦争が終わるころには忘却の彼方へ追いやられた。ところが数年前にバイパスが開通したせいか、ふたたび犠牲者が出るようになった。
※レイと優雨が事故を起こしたバイパスは、久世屋敷の上を通っている。

レポート / 夢見の巫女

 ある民俗学者の記述によれば、久世家の秘術とは、夢を現実に変えることらしい。その能力は代々女性に受け継がれ、もっとも強い者は「夢見の巫女」と呼ばれた。巫女が幸せな夢を見れば、それは現実となる。たとえば湧き水が見つかったり、しおれた稲が実を付けたり。久世家の呪術師たちは、巫女が不吉な夢(=禍夢:まがゆめ)を見ないよう細心の注意を払った。具体的には、巫女を屋敷の最奥(=久世の宮)に閉じ込めていたようだ。

レポート / 久世零華

 眠りの家に出現するという「刺青の女」は、最後の夢見の巫女だった久世零華であろう。あるとき、旅の若者が久世の宮に招かれた。夢見の巫女の血筋は、マレビトと交わることで受け継がれていたようだ。ところが若者は身体が弱かったため、ほどなく客死してしまう。久世家は若者の死を隠したが、ほどなく零華に知られてしまう。零華は夢の国から若者(=死者)を連れ帰ろうとするが、それは禁忌に触れることだった。
 死んだ者は決して還らない──。
 夢が崩れたことで、零華は発狂。こうして久世家は悪夢に塗りつぶされた。今でも零華は、久世の宮で悪夢を見ているのだろう。そして、同じく死者に惹かれる者を引き寄せているのだ。

黒澤邸 / 侵食される現実

 目覚めるたび、レイの刺青は広がっていった。そして黒澤家にも霊障が起こるようになる。久世屋敷に招かれた者は、その周辺にも影響を与えてしまうのだろうか。レイは深紅の身を案じ、遠ざけようとするが、拒否される。
「深紅、信じて。あなたを巻き込みたくないの」
「わかってます。でも、もう遅いんです」
 深紅の胸元にも、あの刺青があった。

零 -刺青ノ聲-
(c) tecmo,ltd 2005

深紅の夢

氷室邸 / 雛咲深紅の夢

 夢の中で、深紅は氷室邸にいた──。そして真冬の幻を追いかけて、奧へ、奧へ。忌まわしい過去の記憶がよみがえる。

氷室邸の悲劇

 2年前、雛咲真冬は氷室邸で消息を断った。深紅は氷室邸を探索して、怨霊と化した霧絵(=縄の巫女)を封印する。しかし霧絵を憐れんだ真冬は、彼女と運命をともにした。氷室邸は崩れ落ち、わだかまっていた悪霊は解放されたが、深紅は天涯孤独の身になってしまった。

 霧絵を撃退すると、やはり真冬も消えてしまった。無人となった地下空間で崩れ落ちる深紅。その背後の闇から、刺青の女が現れた。

《兄の心を奪った霧絵が憎かった。だから滅ぼした......》
「ちがう。そうじゃない。仕方なかったのよ」
《いいえ、あなたのせいよ。あなたは、ほかの女に真冬を奪られたくなかった。ほかの女のものになるくらいなら、いっそ......》
「ちがう! ちがう!」

 気がつくと、全身を縛られていた。刺青の女が嗤っている。そして深紅は、その顔を見た。
「レイさん?」
 零華の冷たい手に触れられると、視界が真っ暗になった。

零 -刺青ノ聲-
(c) tecmo,ltd 2005

黒澤邸 / 合流する悪夢

 深紅が襲われる夢を見て、跳ね起きるレイ。不安は的中し、深紅は目覚めなくなった。刺青が広がっている。どうすればいいの?
 そのとき呼び鈴が鳴って、天倉螢が訪ねてきた。大きな荷物を背負っている。居間に通して、これまでの事情を話すと、螢は眉をひそめた。
「ぼくの推論を聞いてください。でもその前に、繭と澪に起こったことを話さなければ......」

皆神村の神隠し

 2ヶ月前、天倉家の双子の姉妹、繭と澪が山中で行方不明になった。数日後に澪だけ発見されるが、なにがあったのか、繭はどこへ消えたのか、まったく語らなかった。ただその首には、紅い蝶のような痣があった。

 ほどなく澪は目覚めなくなった。医者もお手上げで、澪は衰弱するばかり。霊感のある螢の目には、澪の肌にうごめく刺青が見えた。「眠りの家」の伝承を思い出した螢は、澪を救う手立てを探しはじめた。

「ですが......ちがったんです」
「ちがうって、なにが?」
「眠りの家は──つまり刺青の女は、死者に未練を残した人間を招いているわけじゃない。おそらく霊感の強い人間を集めているんです」
「どうして、そう思うんです?」
「ぼくも招かれたからです」
 袖をまくると、螢の腕にも刺青が浮かび上がっていた。
「優雨、レイさん、深紅ちゃん、澪、そしてぼく。刺青の女は霊能力者を集めて、なにをしようとしているのか......」
 リュックからたくさんの文献を取り出す螢。
「レイさん、いっしょに調べてください」
「はい」
 2人は手分けして文献を読みあさった。そして夜になった。

レポート / 零華と優雨

 久世零華が愛した若者の名前は記録に残っていない。しかし(不自然なことに)零華と若者の写真が残っている。零華の顔はよく見えないが、かたわらの男性は麻生優雨にそっくりだ。
 他人のそら似だろうか? それにしては似すぎている。
 優雨が零華の思い人に似ていたことが、すべての原因かもしれない。だから事故にあった優雨の魂が囚われ、原因不明の昏睡状態になった。いや、そもそもあの事故は、零華が引き起こしたことかもしれない。そう考える方が自然だ。
 とすれば、零華を封じることができれば、優雨は目覚めるはずだ。

零 -刺青ノ聲-
(c) tecmo,ltd 2005

天倉螢の夢

皆神村 / 天倉螢の夢

 夢の中で、天倉螢は皆神村にいた──。
 繭と澪の幻を追って、奧へ、奧へ。澪は螢に射影機を渡そうとするが、繭が止める。
「姉さん、射影機を渡さなくていいの?」
「いいのよ。螢さんはお強いから」
 繭は螢を嫌っているのか、とかく意地悪だった。射影機がないと幽霊を撃退できない。螢は式神で結界を張ったり、自分の身代わりを作ることで難を逃れた。やがて皆神村の中心、「虚」にたどり着く。元凶となった楔を倒すが、澪と繭は連れだって穴に落ちてしまう。その場に崩れ落ちる螢。その背後にレイが現れる。
「レイさん。ぼくは2人を救えませんでした」
「大丈夫。これでいいのよ」
 レイの手が、そっと肩に触れる。はっと気づいた螢が後ずさったが、遅かった。レイが触れた部分から一気に刺青が広がる。激痛にもがく螢を見下ろすレイ。その口元が嗤っていた。やがて視界が真っ暗になった。

零 -刺青ノ聲-
(c) tecmo,ltd 2005

黒澤邸 / 希望

 螢が襲われる夢を見て、はっと目覚めるレイ。不安は的中した。深紅につづき、螢も目覚めない。2人とも全身に刺青が浮かび上がっている。うかつに触れると、吉乃のように煤になってしまいそうだ。
 螢のノートが残されていた。

レポート / 逆打ち

 夢見の巫女が禍夢を見たときは、4人の巫女が「鎮魂ノ儀」で封じることになっていた。
 いま、深紅、澪、螢、レイの4人が集められたのは、ふたたび「鎮魂ノ儀」を行うためと推測される。だが、久世屋敷で見た魔方陣は逆向きだった。零華は鎮魂ノ儀をわざと失敗させることで、黄泉の門を大きく開こうとしている。その目的は、零華が愛した若者を取り戻すことか? その依り代(よりしろ)が優雨ならば、零華の...(ここで途切れている)

意味がわからない。しかし希望はある。
(事件の中心には零華がいる。彼女の妄執が私の優雨を連れ去った。深紅、螢さんも。彼女を倒さなければ!)

零 -刺青ノ聲-
(c) tecmo,ltd 2005

病院 / 決戦に向けて

 優雨の母から電話があった。
「優雨の衰弱が早くて、あと数日しかもちそうにないの。だからレイさん、最後はそばにいてあげて」
 レイは病院に駆けつけた。病室で優雨の手を握りながら、眠りに就く。
「優雨、私を守って......」

零 -刺青ノ聲-
(c) tecmo,ltd 2005

果て

久世の宮 / 最終戦

 レイは終ノ淵にたどり着いた。深紅、螢、繭、澪の4人が魔方陣に囚われている。奧の座には優雨と零華がいた。眠っている優雨の胸に身をゆだねる零華を見たとき、レイの怒りが爆発した。

「返して! 私の優雨を返して! みんなを返して!」
《優雨ではない。私の思い人よ。長く離ればなれだったけど、いま、取り戻すの》
零華の声は、レイそっくりだった。
「あなたの思い人は死んだのよ! 死んだ人は絶対に還らない!」
《あの人は死んでない! 眠っているだけよ!》
「死んでるのがわからないの!」
《死んでない。私を置いて死ぬなんて許さない!》
「これは夢よ、早く醒めて!」
《これは夢よ、早く醒めて!》
 言うことも似通ってきた。女2人が男を奪い合っているようだ。やがてレイは落ち着きを取り戻し、射影機を構えた。

「あなたの真実を写してあげる!」

零 -刺青ノ聲-
(c) tecmo,ltd 2005

病院 / ハッピーエンド

 激しい立ち回りの末、レイは零華を撃退した。射影機を投げ捨て優雨に駆け寄ったところで暗転。
 目覚めると、優雨がいた。昏睡から目覚めたのだ。
「ありがとう。ぼくを救ってくれたんだね。レイ」
「あぁ、優雨!」と抱きつく。
「おめでとうございます、レイさん!」と深紅。
「本当によかった」と天倉螢。
「よかったね!」「よかったわ!」と澪、繭。
「これで無事解決だな」と真冬。
「みんなありがとう」
 レイは感謝するが、なにかがおかしい。しかし優雨に抱き寄せられ、なにも考えられない。

「さぁ、みんな、帰ろう」
 優雨が立ち上がり、みんなで病室を出る。明るい声が遠ざかると、看護婦と医師が病室に駆け込んできた。

「あぁ、患者さんが煤にッ!」

零 -刺青ノ聲-
(c) tecmo,ltd 2005

《ノーマルエンド》


病院 / トゥルーエンド

 激しい立ち回りの末、レイは零華を撃退した。優雨に駆け寄るが、見えない壁に遮られてしまう。射影機をかまえると優雨が写らない。見えないものを写す射影機が、見えるものを写さないなんて?
 あらためて周囲をみわたすと、囚われた4人は少女巫女だった。魔方陣も逆打ちじゃない。これは、悪夢の暴走を鎮めるための術式。振り返ると、倒れているのは私自身。では、零華はどこに?
 巨大な鏡に自分を映そうとしたとき、激しい頭痛に襲われた。暗闇に火花が散って、声が聞こえた。

《優雨が死んだ? どうして!》
(あの子はもともと身体が弱かったのよ)
《私を置いて死ぬなんて許さない!》
(葬儀は滞りなく......)
(レイさん、しっかりしてください。優雨さんは死んだんです!)
《これは夢よ! 早く醒めて!》
(え? レイさんが事故を起こしたって?)
(どこにも異常は見つけられませんが、眠りつづけています)
(警察は後追い自殺の可能性もあるって)
(そんな馬鹿な)
(優雨さん、レイさんを連れて行かないで!)

 目覚めると、深紅がいた。レイの手をにぎり、涙ぐんでいる。
「レイさん!」
 抱きつく深紅を螢が押さえ、医者を呼ぶ。騒がしくなる病室。ここは優雨の病室だったはずだが、眠っていたのは自分自身だった。

零 -刺青ノ聲-
(c) tecmo,ltd 2005

エピローグ

 数日後、レイは事故を起こしたカーブに立っていた。車で深紅が待っている。眼下に見える久世屋敷に、花束を投げ込んだ。

「私を救ってくれたのは、あなた?」

 青空を見上げて、つぶやく。

「優雨、私は生きる。だから見ていて......」

零 -刺青ノ聲-
(c) tecmo,ltd 2005

《トゥルーエンド》


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