キリギリスの冬

2006年 政治・経済 人と動物 仕事 考え事
キリギリスの冬

昔、先輩からこんな話を聞いた。

先輩の友人は、大学を卒業しても定職に就かず、ひたすら遊びつづけた。
先輩曰く、「大学生活が終わらないヤツ」だそうだ。
友人は海が好きだったので、南の島に移り住んで、サーフィンやらスキューバなどに熱中した。

一方、就職した先輩は、ぎゅうぎゅう詰めの満員電車の中で考えた。
(アイツ、将来はどうするんだろう……?)

25歳を過ぎても、友人は働かなかった。
30歳を過ぎても、友人は働かなかった。
(もう、まともな就職はできないだろう……)
仕事も忙しくなって、友人の家に遊びに行く回数も減ったころ、彼から手紙が届いた。

友人は、観光客相手の商売をはじめたらしい。
自分が見つけたベストスポットを紹介したり、案内しているらしい。雇われじゃなくて、自分が事業主。なので規則らしい規則もない。気分が乗らなければ、店じまい。
相変わらず、時計を見る必要がない生活がつづいているらしい

「夏を気ままに過ごしたキリギリスが、
 冬はアリたちに演奏を聴かせているようなもんだ」

と先輩はまとめた。先輩は40歳になっていた。
これまでの人生に悔いはないけどね、と付け加えた。

『働かざる者食うべからず』
『まじめにコツコツ働かないと、いつかヒドイ目に遭う』
『ニートは負け犬』

労働を美徳とする社会倫理は、私たちの深層心理に刻み込まれている。なので、いま働いていない人も、なんらかの負い目を感じている。

──働かなければならない。
──毎日、通勤電車に乗らなければならない。
──不条理な命令に従い、自分を抑えられるのがオトナなんだ。

しかし果たして本当にそうだろうか?

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