N氏と犬と行儀のよさ
2010年 生活 人と動物 N氏N氏から、飼い犬の後日談を聞いた。
前回までのあらすじ
N氏は娘のため、室内犬を飼うことにした。仮に「コエヌ」と呼ぼう。N氏は、コエヌが鳴いたり、粗相しないよう、徹底的にしつけた。結果、コエヌはとても行儀のいい犬になったが、娘さんの興味はよそに移ってしまった。
ぜんぜん相手をしてもらえないコエヌは、N氏の前でのみ粗相するようになった。N氏に叱られるとき、コエヌはしっぽを振っていた。
あれから1年半。
コエヌは相変わらず行儀よく、N氏一家と仲良く暮らしている。娘さんはコエヌを無視はしないが、特別扱いもしない。まぁ、N氏と同じ扱いだ。
N氏の家では、犬はソファーに乗ってはならない決まりになっている。ただし、家人の許可を得たときは、ひざに乗ることはできる。コエヌにとって、娘さんの膝に乗ることは最高の栄誉だ。なのでコエヌは娘さんの足にじゃれつき、身もだえして訴える。
(ねぇ、ひざに乗せてください。おねがいします!!)
気まぐれに、その願いは叶えられる。
その姿をいじましく見ていたN氏。ところが娘さんがいないとき、コエヌはぴょんとN氏のひざに飛び乗ってきた。
「なんだ、おまえ、ジャンプできたのか?」
コエヌはソファーの高さまで飛び上がれないと思っていたが、それは演技だった。すべては娘さんの寵愛を受けるため。できるけど、やらない。やってもよいときは、やる。コエヌは賢い犬だった。N氏は深く感心したそうだ。
この話を聞いて、私は泣いた。いろんな意味で。