ヒキコモリ猫

2008年 哲学 人と動物 日常 甥っ子
ヒキコモリ猫

 私の実家には、2匹の猫が棲んでいる。

 茶猫(ちゃちゃ)はよく見かける。以前は祖父と遊んでいたし、最近は甥っ子に追い回されているようだ。もう片方の白猫(ねね)は、何年も姿を見ていない。2階の奥の部屋に隠れているそうだ。
 死んでるわけじゃない。ご飯は食べるし、トイレも使っている。ときおりモノを探しに入室すると、ちらっと白い影を見る。モノ探しの間はどっかに避難して、しばらくすると戻ってくるようだ。
 実家の母や妹はそれをふまえ、部屋の扉をすこーし開けている。閉じると ねね が出られない(入れない)からだ。「開かずの間」ならぬ「閉じずの間」だな

 ねね は金目銀目(オッドアイ)である。左右の瞳の色が異なっている。白猫(白地の多い猫)によく見られ、高い確率で聴覚障害をもっているらしい。つまり ねね は、生まれつき耳が聞こえないかもしれないのだ。
 耳が聞こえない猫が、暗い、静かな部屋に引きこもっている。ゲストはもちろん、家族にさえ姿を見せようとしないのは、そうしたハンディキャップのせいかもしれない。

「ナニ言ってんの。ねね は聞こえてるわよ」

 と母は言う。予防注射のついでに獣医さんが診たところ、聴覚に異常はないそうだ。両耳とも、まちがいなく正常だってさ。

「え? それじゃ、なんで引きこもってるの?」
 と私は問うたが、その答えを母が知っているはずもなかった。母は言った。
「そーゆー猫なんでしょ」
 あれこれ理由や背景を考えた私は、馬鹿だった。

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