金田一耕助の冒険 (古谷一行) Kindaichi Kousuke No Bouken | The Adventures of Kosuke Kindaichi

1979年 日本映画 2ツ星 #金田一耕助 コメディ 殺人鬼 狂気

知られざる金田一耕助の暗黒面

プロット

数々の難事件を解明した金田一耕助は、押しも押されもしない国民的スターになった。しかし親友の等々力警部は、彼の本質を見抜いていた。金田一は猟奇殺人や連続殺人、見立て殺人をこよなく愛する異常者なのだ。金田一は犯人を予測しても逮捕せず、犯罪の完成を見届けようとする。金田一が殺人を阻止できないのはそのためだった。

金田一は若い娘にそそのかされ、未解決だった「瞳の中の女」事件に取り組むことになる。やがて新たな殺人が起こり、事件はおどろおどろしい様相を呈してくる。やる気になった金田一は推理力を発揮し、事件を解決する。
しかし解決したことで、金田一は喪失感にさいなまれる。日本の美しい犯罪はもう起こらないのか。うつろになった金田一は、みずから猟奇殺人を犯してしまう。みかねた等々力警部は金田一を射殺し、彼の名声を守るのだった。

プロットはおもしろい。シリーズへの愛情も感じられる。しかしギャグがすべて台無しにしてしまった。シリーズのパロディはまだしも、CMネタ、楽屋ネタ、世相ネタはつらい。当時私は8歳で、映画を見たのは2013年だから、隔絶は仕方ないけど、たぶん当時の大人が見ても痛々しかっただろう。ファンでなければわからないネタを、ファンが見たら起こりそうなギャグで包むのは致命的なミスだ。

古谷一行が演じる金田一耕助はだらしなく、幻滅させられる。しかし事件が起こると、シリアスな(いつもの)口調に戻った。つまり事件がないときの金田一を描いていたわけか。しかし変身の対比が遅すぎる。冒頭にシリアスな金田一をもってくる方がわかりやすかっただろう。
田中邦衛が演じる等々力警部は新鮮だった。ここまで名探偵と対等にふるまう警部もなかった。金田一の正体を知りながら、いっしょに浮かれる人間臭さもいい。しかしプロットに立ち返るなら、等々力警部は金田一を心配する立場であるべきだ。等々力警部は観客の分身のはずなのに、ハメを外しすぎている。

プロットはおもしろいんだけど、もったいない。

金田一耕助
石坂浩二
渥美清
古谷一行
  • 名探偵・金田一耕助シリーズ
  • 1.本陣殺人事件(1983)
  • 2.ミイラの花嫁(1983)
  • 3.獄門岩の首(1984)
  • 4.霧の山荘(1985)
  • 5.死仮面(1986)
  • 6.香水心中(1987)
  • 7.不死蝶(1988)
  • 8.殺人鬼(1988)
  • 9.死神の矢(1989)
  • 10.薔薇王(1989)
  • 11.悪魔の手毬唄(1990)
  • 12.魔女の旋律(1991)
  • 13.八つ墓村(1991)
  • 14.悪魔が来りて笛を吹く(1992)
  • 15.女怪(1992)
  • 16.病院坂の首縊りの家(1992)
  • 17.三つ首塔(1993)
  • 18.迷路の花嫁(1993)
  • 19.女王蜂(1994)
  • 20.悪魔の唇(1994)
  • 21.悪魔の花嫁(1994)
  • 22.呪われた湖(1996)
  • 23.黒い羽根の呪い(1996)
  • 24.幽霊座(1997)
  • 25.獄門島
  • 26.悪魔の仮面(1998)
  • 27.悪霊島
  • 28.トランプ台上の首(2000)
  • 29.水神村伝説殺人事件(2002)
  • 30.人面瘡(2003)
  • 31.白蝋の死美人(2004)
  • 32.神隠し真珠郎(2005)
鹿賀丈史
豊川悦司
上川隆也
稲垣吾郎

関連エントリー

1979年 日本映画 2ツ星 #金田一耕助 コメディ 殺人鬼 狂気
金田一耕助VS明智小五郎ふたたび

金田一耕助VS明智小五郎ふたたび

Kindaichi Kosuke VS Akechi Kogoro 2
2014年の日本ドラマ ★2

ふたたび足りない金田一。 1年ぶりの続編。金田一は明智に苦手意識をもち、対抗しようとする。まー、子どもだね。 隠れキリシタンを題材にしているが、村人たちを蒙昧に描いているのは気に入 (...)

金田一耕助VS明智小五郎

金田一耕助VS明智小五郎

Kindaichi Kosuke VS Akechi Kogoro
2013年の ★2

玉緒が幼女! 「VS」と銘打ってるが、金田一耕助(山下智久)は未熟な子ども、明智小五郎(伊藤英明)は立派な大人として描かれている。その差は強烈で、日本を代表する探偵2名とは思えない (...)

シリーズ深読み読書会「横溝正史の集大成!"悪魔の手毬歌"」

シリーズ深読み読書会「横溝正史の集大成!"悪魔の手毬歌"」

Fukayomi Dokusho-kai "Akuma no Temari-uta"
2018年の日本ドラマ ★3

作品を楽しむために。 NHK-BSで放送している「シリーズ深読み読書会」の、『悪魔の手毬唄』を見た。深読みというくらいだから、トリックも犯人もすべて明かされる。状況が整理されるので (...)

本陣殺人事件 (中尾彬)

本陣殺人事件 (中尾彬)

The Murder in the Honjin
1975年の日本映画 ★3

個人の問題なのか? あらすじ 岡山県の旧本陣・一柳家で、密室殺人が起こった。長男・賢蔵と妻・克子が、結婚したその夜に、日本刀で斬り殺されたのだ。屏風に残された血の指あと、賢蔵への脅 (...)

悪魔が来りて笛を吹く (吉岡秀隆)

悪魔が来りて笛を吹く (吉岡秀隆)

The Devil Comes and Plays His Flute
2018年の日本ドラマ ★5

犯人も知らない動機 「悪魔が来りて笛を吹く」は、横溝作品の中で屈指の「後味の悪さ」を誇る。西田敏行(1979年版)がおちゃらけても、ぜんぜん救われなかった。2018年版は「後味の悪 (...)

獄門島 (片岡千恵蔵#2-3)

獄門島 (片岡千恵蔵#2-3)

Gokumon-Jima
1949年の日本映画 ★5

「封建的な......余りに封建的な」 片岡千恵蔵の金田一耕助シリーズ第2弾。映画は前篇75分、後篇94分に分けて上映された。私が鑑賞したのは2019年だから、70年の開きがある。 (...)

ページ先頭へ