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[レビュー2007年01月05日に発表された 

悪魔が来りて笛を吹く / 稲垣吾郎の金田一耕助シリーズ#4

The Devil Comes and Plays His Flute

さっぱり、くせのない金田一耕助

 「稲垣吾郎の金田一耕助シリーズ」第4弾。私はここから視聴したけど、金田一耕助がライトで驚いた。そのへんの若者がウロチョロしているみたい。とはいえ「ふつう」ではない。頭を掻いてるが不潔ではなく、どもっても説明は流暢。マントをばさりと翻し、屋根の上でフルートを吹く。空気が読めない発言が多いが、誰からも「先生」と慕われる。「どうだ、かっこいいだろう?」と言わんばかりの演出だが、そう見えないからちぐはぐ。こんな青年は現実には存在し得ないだろう。

 焼け野原の東京がCGで再現されていた。映像はすごい。BGMが大きく、耳障り。演出が強すぎる。印象的なシーンを作ろうと、なにもかも極端にしてる感じ。たとえば駒子(妙海)は白髪の魔女。ファンタジー世界の住人と復員兵が話すシーンはシュールだった。滑稽と言えば滑稽だが、持ち味と言えば持ち味か。
 2時間枠に収めるため、事件は簡略化され、登場人物は省略されている。玉虫公丸を単純な撲殺にしたり、タイプライターの解析を省いたのはいいアイデア。しかしそれでも駆け足は印象は拭えないし、残ったドラマやキャラクターが濃くなったわけでもない。

警察は無能で従順

 等々力警部ではなく、「犬神家の一族」の橘署長が栄転してきたとかで、金田一のサポートにまわっている。なぜかつねに制服姿で、つねに浮いている。また自分で判断・行動することはなく、なにもかも金田一の指示してもらい、くっついてまわる。どういう世界なんだろ?

キャラクターを削っても強調されない

 華子(利彦の妻)を削ったことで、利彦の悪辣さがわからない。菊江(公丸の妾)が没落する華族をあざ笑うこともないから、存在意義が乏しい。もっと洗練できるだろう。椿美禰子(国仲涼子)は美人で、落ち目の華族の哀愁が感じられない。もうちょい地味に描いてほしかった。

 椿秌子を演じる秋吉久美子は当時53歳だが、肌がきれい。たたずまいは「らしい」感じがする。もっと出番を増やしてほしいが、このくらいがちょうどいいのかもしれない。致命的だったのは、利彦と秌子との性描写がないこと(言及はされる)。それをすてるなんてとんでもない!

犯人に絶望感、悲壮感がない

 三島東太郎(成宮寛貴)はどうにも軽い。古谷一行版の、沖雅也の愛憎あふれる演技を見てるとつらい。それでいて説明シーンは長いから、自慢話に聞こえる。不敵な笑みを浮かべたことで、復讐の純粋性も失われている。
 三島は悪魔の紋章が決定的証拠になることを知っていながら、無防備に着替えている。秌子は絶叫するが、その理由を語らない。その秌子がいるまえで、金田一が状況を再現するのだから、だんたんシュールに見えてきた。

 いろいろ不満点を挙げているが、こうしてリメイクされることは喜ばしい。シリーズほかの作品も見てみよう。

金田一耕助
石坂浩二
渥美清
古谷一行
  • 名探偵・金田一耕助シリーズ
  • 1.本陣殺人事件(1983)
  • 2.ミイラの花嫁(1983)
  • 3.獄門岩の首(1984)
  • 4.霧の山荘(1985)
  • 5.死仮面(1986)
  • 6.香水心中(1987)
  • 7.不死蝶(1988)
  • 8.殺人鬼(1988)
  • 9.死神の矢(1989)
  • 10.薔薇王(1989)
  • 11.悪魔の手毬唄(1990)
  • 12.魔女の旋律(1991)
  • 13.八つ墓村(1991)
  • 14.悪魔が来りて笛を吹く(1992)
  • 15.女怪(1992)
  • 16.病院坂の首縊りの家(1992)
  • 17.三つ首塔(1993)
  • 18.迷路の花嫁(1993)
  • 19.女王蜂(1994)
  • 20.悪魔の唇(1994)
  • 21.悪魔の花嫁(1994)
  • 22.呪われた湖(1996)
  • 23.黒い羽根の呪い(1996)
  • 24.幽霊座(1997)
  • 25.獄門島
  • 26.悪魔の仮面(1998)
  • 27.悪霊島
  • 28.トランプ台上の首(2000)
  • 29.水神村伝説殺人事件(2002)
  • 30.人面瘡(2003)
  • 31.白蝋の死美人(2004)
  • 32.神隠し真珠郎(2005)
鹿賀丈史
豊川悦司
上川隆也
稲垣吾郎

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