レビュー  2015年10月26日  に発表された 

007(24) スペクター
Spectre

3ツ星

007よ、どこへ行く...

新生ボンドシリーズの完結編! 44年ぶりにスペクターが登場し、シリーズ最高額の予算で撮った148分もの超大作だから、素晴らしいと絶賛したい! 実際、素晴らしいところはたくさんある! でもやっぱり演出不足、説明不足、盛り込みすぎ! もったいない! もどかしい!!!!!

原因はジェームズ・ボンドが、渋い外見に反して精神が未熟なことだろう。他人を信用せず、無計画に突っ込んで、本気で女性を愛し、失敗を悔やむ。まぁ、スーパーヒーローだった007像をリブートしているのだから、揺れ動くことは仕方ない。しかし4作目なんだから、スパイとしての哲学を感じさせる成長を見たかった。いや、もう完成しちゃっていい。
とどのつまり、ダニエル・クレイグの外見と行動のギャップが、最後まで埋まらないシリーズだった。

『女王陛下の007』(1969)を彷彿させるラストも好きなんだけど、「それでいいの?」という不安を拭えない。『ダークナイトライジング』(2012)のバットマン卒業は納得できたが、本作でボンドを引退させる意義がわからない。というか、そこまでボンドがマドレーヌ・スワンに惚れ込むとは思えない。状況的に、彼女がスパイの可能性だってあるのだから。

スペクター壊滅も不可解。スペクターは国家、民族、イデオロギーを超越した悪の象徴として、普遍的に存在してほしい。であればこそ、007のようなスパイの存在意義となる。『スカイフォール』(2012)でMがスパイの必要性を演説していたが、スペクターがあればそれで足りる。
もちろん次の映画でスペクターやブロフェルドの復活はありえるが、「スペクター」と題する映画の結末としては物足りない。

「ナイン・アイズ計画」も練り込み不足。各国の情報網を統合できれば、そりゃ、スパイは時代遅れになるだろうけど、そんなものが実現できるはずがない。欧州連合(EU)ならありえるが、2016年にイギリスが離脱を宣言したことで、ますますリアリティが失われた。
ナイン・アイズ計画と戦うためには、制御も追跡も不可能な007のようなスパイが必要になるという構図はおもしろいが、スペクターと並行して描くには大きすぎる。それからC(アンドリュー・スコット)に『Sherlock』のジム・モリアーティが透けて見えちゃうのも問題だ。高いところから落ちて死ぬところも、わざと演出しているとしか思えない。
本作はスペクターの追跡に専念し、壊滅させるも疑念が残り、次回作でナイン・アイズ計画を描くべきだった。

映像の完成度は高い。死してもMの存在感が強かったり、Qやマニー・ペニー、マロリーが活躍するのも嬉しい。あんがい、これまでの007シリーズをまったく知らない人の方が楽しめたかもしれない。


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007(24) スペクター