SparkShorts 誕生の物語 A Spark Story
2021年 外国映画 3ツ星 ドキュメンタリー @ピクサーテコ入れとしては、うまい。
短編映画はピクサーの伝統。「SparkShorts (全10話)」は、アーティストやディレクターの養成を目的としたプログラム。私は視聴済み。条件は物語であること、すべての観客を対象にしていること。制作期間は6ヶ月。
このドキュメンタリーでは、『誕生日シンドローム』のアフトン・コービンと、『おばあちゃんの特別な日』のルイ・ゴンザレスが、監督に選ばれて、ストーリーを考え、完成させるまでが記録されている。
正直なところを言えば、『誕生日シンドローム』と『おばあちゃんの特別な日』の2作品は、それほど刺さった作品ではない。というか、SparkShortsシリーズはどれも娯楽性が低く、あまり楽しめなかった。『ハイタッチ』はよかった。
そんな私の視点ではあるが、ピクサーで働くクリエイターたちの考え方、作り方、力の合わせ方を垣間見られたのはよかった。
自分が何者かを語るプログラム?
ピクサーはSparkShortsを、「自分が何者かを語るプログラム」として認識していた。「個人的な経験、出自、性癖を肯定し、表現していこう。それが普遍的なものである」と。
私はそう思わない。もちろん監督個人の経験、出自、性癖が漏れ出た作品は好きだが、それはその監督であればこそ。だれでもおもしろくなるわけじゃない。自己肯定、多様性の尊重はリッパだが、それだけで「おもしろい物語」を作れるなら苦労しない。ピクサーも、だれが化けるかわからないから、SparkShortsプログラムで試しているんだろう。
SparkShorts シリーズが物足りないのは、監督たちの人間性が物足りないから。あるいは、人間性をおもしろく引き出す監督の監督がいないから。ラセターが去って、ピクサーは変わってしまったのだろうか。
物語を作る物語?
ドキュメンタリーもまた作品だ。本作の制作意図は、おそらく SparkShortsシリーズのテコ入れだろう。作品だけでは足りない魅力を、ドキュメンタリーで補っている。本作を見れば、SparkShortsを好きになる。
個人的には、シリーズの各作品それぞれを監督に紹介してもらいたかった。『誕生日シンドローム』と『おばあちゃんの特別な日』の2作品に特化したのはなぜか? シリーズ最後の2作品だから? 2人の監督が対象的な人物だったから? それまでの作品ではメイキングを撮影していなかったから? 2作品が特別とは思えないから、やはりテコ入れなんだろうなと、邪推してしまう。
# | 作品名 | 原題 | コメント |
---|---|---|---|
1 | 心をつむいで | Purl | 新入社員の不安。 |
2 | ハイタッチ | Smash and Grab | おもしろかった。 |
3 | 猫とピットブル | Kitbull | 偶然による解決はどうも。 |
4 | 宙を舞う | Float | 障害は個性。 |
5 | 風に乗る | Wind | 祖母の犠牲。 |
6 | ループ | Loop | 障害への理解。 |
7 | 殻を破る | Out | カミングアウト。 |
8 | 夢追いウサギ | Burrow | 夢の部屋を作る。 |
9 | 誕生日シンドローム | Twenty Something | 20代の自分の中身は子供。 |
10 | おばあちゃんの特別な日 | Nona | 大切なのは「今」だけど。 |
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